楽屋の雰囲気、ケータリング、新幹線移動
芸人ファーストなおもてなしとは

 K-PROが業界のトップランナーとなった要因はどこにあるのか。児島氏は、ライブ制作の要諦についてこう話す。

「ライブを行ううえで最重要視しているのは、芸人さんファーストという点。ライブで芸人さんが、ベストなパフォーマンスをできるような環境づくりを徹底しています。芸人さんにとってはただの1ステージかもしれませんが、お客さんにとっては初めてのライブかもしれない。もしかしたら一生に一度かもしれない。だから、芸人さんがネタに集中できるようなベストな環境を用意したいんです」

 児島氏は、代表といえどもほとんどのライブ会場に足を運ぶ。楽屋で芸人とコミュニケーションを取るのも重要な仕事だと言う。

「また出たいと、芸人さん思ってもらうために、楽屋の雰囲気はとても大事にしています。やはり、居心地の悪い楽屋だと舞台上でのパフォーマンスにも影響しますからね。なので、私は楽屋に行って、ポツンとしている芸人さんや人見知りな芸人さんに積極的に話しかけて、周りの芸人さんの輪に入れるようなきかっけ作りをしています。一方、ソワソワしていたり、元気がなさそうな芸人さんがいたら話を聞きます。すると『今日、新ネタをするのでピリピリしてるんです』などと答えてくれるので、別の楽屋や人が来ないスペースを紹介したりします。芸人さんの気持ちは、なるべく察するようにはしてますね」

「演者ファースト」が伝わるエピソードは他にもある。充実したケータリングを用意したり、東京から地方に行く芸人や地方から東京にやってくる芸人の移動は必ず新幹線にしているのだ。

「昔のライブでは主催者が用意するのは2リットルのペットボトルと紙コップくらいでしたが、芸人さんに喜んでほしくてお菓子などを用意したんです。それから、『夜のライブならご飯を食べてない芸人が多い』と言われて、おにぎりやパンも置いておくようにしました。勝ち抜きライブなどでは、ランクによって豪華なお弁当を出したりしますね。新幹線移動も芸人さんのパフォーマンスを考えてのこと。夜行バスの方が圧倒的に経費は安いですが、そのぶん芸人さんの疲労が舞台で出るんです。ちなみに、芸人さんが前乗りしたい場合でもチケットを取りますし、ホテルも取ることもあります。それで、いいパフォーマンスができればいいし、前乗りしてエピソードトークのネタを作ってくれてもいいです」

 こうした児島氏が行う芸人との密なコミュニケーションは、舞台上のパフォーマンスだけではなく、ライブ運営にも役立っている。

「主催者側と芸人との信頼関係に繋がっていますね。この芸人さんなら、こういう場面でこう立ち回ってくれるだろうと思えるんです。例えば、ライブですべった時でも、この芸人さんがいれば最後ドカンと一言突っ込んで終わらせてくれるだろうとか、新人が緊張していても笑いに変えてくれるだろうとか。主催者側やお客さんが、ハプニングさえも安心してみられるような芸人さんの組み合わせができるようになりました」

 ただ面白いだけではなく、ライブを成り立たせられるような芸人を、児島氏がコミュニケーションを取りながら見極めているのである。また、ライブでの“団体芸”やネタへのアドバイスも児島氏は楽屋内の会話で行う。それゆえ、芸人からの信頼も非常に厚く、「K-PROさんのライブは絶対に出る」と公言している芸人もいるほどだ。