「本人の希望に沿う」
最期の迎え方

「死ぬときぐらい 好きにさせてよ」

 これは2016年、宝島社が、新聞の全国紙4紙でおこなった企業広告です。樹木希林さん出演の大広告には、度肝を抜かれましたね。

 じつは現在、「死ぬとき」をめぐって、大転換が起こっています。

 ぜひとも知っておいていただきたいことは、2つです。

 1つめは、「人生の最期を、どこですごすか」ということについて、これまでとは考え方が180度、転換してきているということです。

 もう1つは、「自分の最期は自分で決める」という時代になってきている、そして政府がそれを後押ししている、ということです。

 これまでは、体調が悪くなると、病院で検査を受けたり、入院して治療を受けたりするのが当たり前、と思われていました。今でもそう思っている方も多いでしょう。実際に、病院で最期を迎える方が一番多く、全体の約8割くらいです。

 そのほかでは、1割強の方が、ご自宅で最期を迎えられ、残りの少しの方は、施設で最期を迎えられます。

 在宅死というのは、少数派であったのです。

 しかし、新型コロナで、病院の医療が変わりました。面会が制限されるようになったのです。

「面会おことわり」という病院は、さすがに今は減りましたが、「親族に限る。2名まで。15分間まで」といった制限がつけられるようになったのです。こうした面会制限が続いている病院は多いのです。

 人生の最期の最後の段階になって、ご本人は心細いでしょうに、家族と会えない。

 また、ご家族の立場からしても、「最期は一緒にすごしたい、手足や背中をさすってあげながら、話をしたい」と思っても、できない時代になったのです。

 そこで、「状態が悪い、だから、家に連れて帰りたい」と希望される方が、とても多くなりました。

 これまでは「状態が悪いから入院」だったのに、今では「状態が悪いから退院して家に帰る」という時代になったのです。

 どうでしょう、正反対ですよね。

 病院側からも、「こんなに状態が悪いのに家に帰るなんて、とんでもない」と言われるようなことはなくなりました。「病院にいたのでは悔いが残る」ということに、病院も気がついてきたのです。