日本政府も、宇宙空間における安全保障の重要性を認識しています。22年12月の「防衛3文書」の改定では、まず、航空自衛隊という名称を「航空宇宙自衛隊」へと変えることを決めました。

 その上で、23年度当初予算では、宇宙空間における作戦能力の強化のために、1529億円を計上しています。さらに23年度からの5年間で、合計1兆円の宇宙関連の契約を結ぶこと、を決定しました。19~22年度の宇宙関連経費は、年間で数百億円規模でしたから、政府が、宇宙分野での安全保障に注力し始めたことがわかります。

東アジアの危険国家群を牽制する
大戦略「自由で開かれたインド太平洋」

 日本は近年、周辺各国との間での、安全保障に関する「協力関係」を強化すべく、さまざまな枠組みを作っています。

 従来の、日米安保条約を基にした米国の「核の傘」、に加え、近年は、豪州や英国と、「準同盟」とも言える関係を築きつつあります。

 さらに、二国間の「2プラス2」(外務・防衛相による協議)を、米国や豪州、英国、独仏印、インドネシア、フィリピンなどとの間で開始・継続しています。

 多国間では、日米韓・日米豪の閣僚級対話、等を実施するようになりました。

 また日本は、「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP(フォイップ):Free and Open Indo-Pacific)と呼ばれる枠組みの推進、に注力しています。

 内容としては、(1)法の支配、航行の自由、自由貿易等の普及・定着。(2)経済的繁栄の追求:経済連携の強化など。(3)平和と安定の確保:海上における国際法などの執行能力の構築、人道支援・災害救援等、の3つの柱が掲げられています。

 FOIPは、東アジアを起点として、南アジア、中東、アフリカに至る地域をカバーしています。域内で、安全保障の確保、インフラ整備、経済発展、ビジネス環境の整備、などを目指しているのです。日本にしては珍しい、優れた大戦略だと言えるでしょう。