さらに17年には、日米豪印による「QUAD(クアッド)」(日米豪印戦略対話。4カ国戦略対話:Quadrilateral Security Dialogue)という話し合いの場も立ち上がり、21年3月からは首脳級(日本は首相)の会談が始まりました。

 クアッドの主眼は、急成長する、アジアの大国インド、を友好国として引き込むことにあります。

極東ロシアの石油・ガス権益を
手放した穴はどこで埋めるべきか?

 日本の立場を理解するためには、危険国との間での、経済関係も見る必要があります。

 北朝鮮との関係では、日本が経済制裁を実施。06年にすべての輸入を、09年にすべての輸出を禁止しています。そのため、両国間での輸出入は現在、いっさいありません。

 一方、ロシアと日本の関係では、日本が多くのエネルギー資源を輸入していること、が特徴です。21年の数字では、日本が輸入した化石燃料のうち、ロシアの割合は、原油で4%、LNGで9%、石炭で11%に上ります。

書影『ニッポンの数字――「危機」と「希望」を考える』(ちくまプリマー新書、筑摩書房)『ニッポンの数字――「危機」と「希望」を考える』(ちくまプリマー新書、筑摩書房)
眞 淳平 著

 22年2月に、ロシアがウクライナを侵攻して以来、欧州各国はロシア産エネルギー資源の輸入規制を実施しています。しかし、日本政府や日本企業などは、ロシア極東の「サハリン1」「同2」と呼ばれる油田・天然ガス田の運営企業に出資(発行済み株式数の2~3割程度を購入)。そこから産出される石油や天然ガスを買っています。

 日本はこれまで、エネルギー資源のほとんどを、サウジアラビアやUAE(アラブ首長国連邦)、カタール、クウェートなど、中東各国からの輸入に依存してきました。この状況を危惧した日本政府と関連企業が、ようやく獲得したのがサハリン1、2の権益です。

 ウクライナ戦争の非情さを考えれば、この権益は手放す方がよいのかもしれません。

 ただ、権益を一度手放せば、ウクライナ戦争が終結した後、再び得ることは難しくなるでしょう。手放しても、中国などが権益を買うだけかもしれません。ロシアのエネルギー資源とどう向き合えばよいのか。日本には、この問いが突きつけられているのです。