帝人の車体骨格をすべて炭素繊維で作ったコンセプトカー
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 帝人が2013年3月期業績予想について、4度目となる下方修正を発表した。当初の通期予想は売上高8400億円、当期純利益220億円だったが、最終的に売上高7400億円、当期純損益300億円の赤字に転落する見通しだ。電子材料・化成品事業や高機能繊維・複合材料事業が、市況の予想以上の悪化によって販売不振に陥っている。度重なる下方修正に、経営管理体制への疑問も湧き上がっている。

 実際、東レ、クラレといった他の繊維会社はこれほど大きな下方修正を行っていない。この差は、「帝人は生産計画、在庫管理が甘い」(大手証券アナリスト)ことが原因といわれる。甘い需要予測で製品を作り、在庫が積み上がるとあわてて減産するという無計画ぶりが目立つという。季節要因もあるが、12年12月末は、3月末に比べて商品および製品が208億円増の901億円となっている。

 稼ぎ頭のヘルスケア事業以外は、絶対的な競争力が乏しいために、市況によって収益が大きく変動することも原因だろう。

 減損対象となった炭素繊維事業は、「スポーツ・レジャー向け製品の競争が激化した」(帝人)と説明している。裏を返せば安定的に利益が稼げる航空・宇宙産業向け、圧力タンク向け製品の用途開発が進んでいないということだ。買収した炭素繊維を製造する子会社、東邦テナックスとの事業統合も進んでいないといわれており、立て直しは急務だ。

 ただし炭素繊維事業の保守的な減損処理については、帝人の真面目な企業カラーを映しており、評価できる点だ。買収に伴うのれん代を一括処理しており、「ウミを出し切ったので、今後はプラスしかない」(帝人関係者)とみている。

 もっとも、市場の信頼を得るには、最終的には業績回復しかない。現在取り組んでいるコストダウンを着実に進めるとともに、生産計画や在庫管理の強化が求められる。市況に左右されない強い事業構造へと転換する必要もあり、真の業績回復までは時間がかかりそうだ。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 野口達也)

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