日本語習得→慶應ロー進学→司法試験突破!ゼロから来日10年で弁護士になった英国人男性の合格体験記タム・ピーター弁護士(2024年3月/弁護士ドットコムニュース撮影)
*本記事は弁護士ドットコムニュースからの転載です。

 多様な背景を持つ法曹を送り出すべく創設されたロースクール(法科大学院)。開校20年が経ち苦戦している状況は否めないが、一方で「ロースクールがなければ弁護士になっていなかった」という人材を呼び込んだ“実績”が存在することもたしかだ。

 イギリスから来日し、日本語を覚えることからはじめて10年かからず司法試験に合格したタム・ピーター弁護士もその一人だ。卒業したイギリスの大学では経営学を専攻。来日前、日本語を学んだことはなく、法律を体系的に勉強した経験もなかった。

 ロースクールには未修者コースで入学したが中学校の授業で触れるレベルの日本国憲法の条文を聞いてもわからないところからスタートしたため、「日本の教育を受けたことのない私より純粋に未修の人はいなかったのでは」と振り返る。

 そんなタム氏は、英語力を生かし、国内の企業法務だけでなく、外国企業とのクロスボーダー取引などで活躍しているが、なぜ敢えて日本のロースクールに進学し、法曹を目指したのか。本人に尋ねて返ってきたのは「意外な答え」だった。(ライター・望月悠木)

「高校で教える英語の指導助手」として来日

 タム氏は、ロンドン大学ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスを卒業後、鳥取県内の高校で英語を教える外国語指導助手(ALT)として来日した。

「イギリスには大学卒業後の1~2年間にボランティアや留学などで社会体験を積むための猶予期間『ギャップイヤー』という制度があります。当時の私は就活して働くイメージができず、ギャップイヤーを利用しようと思っていました。