ここで問題となるのが、「よりよいもの」とは何か、どういう基準で選ぶべきなのか、ということです。

 例えば、3つの不動産物件を考えてみてください。1軒は郊外にある3LDK・庭付き・車庫付きの一軒家。2軒目は都心駅チカマンションの1K。3軒目は某高級住宅街にある5LDKの豪邸だとします。あなたにとって「よりよい家」はどれですか?

3つ並んだ家のイラスト同書より

 この場合、人によって、状況によって、目的によって、選ぶ家は違うはずです。

 不動産価値でいえば3軒目が一番高いかもしれませんが、自分でお金を払って住むとなったら、払いきれないかもしれません。あるいは、広すぎて部屋を持て余すなんてことも考えられます。

 世の中でいわれている価値の高さが、自分にとっての「よりよいもの」と一致するとは限らないのです。

 また、ここで挙げた3軒は極端なので、どれもよくない場合『この3軒から選ぶくらいなら、今住んでいる家に住み続けたほうがいいようなケース』もあるでしょう。

「誰にとっても、どんな状況においても、何をするためにも絶対的にいい」ものが存在しない以上、どういう基準で検討するのかは、とても大切な視点です。

 しかし、私たちはつい、自分のフィーリングだけで「これがよりよい」と決めてしまいがちです。

 それが自分1人で住む1Kマンションなら、「なんとなくこの部屋が好き」と決めてしまってもいいと思います。しかし、今回のように仕事で何か企画を立てる場合、あるいは発注先を検討する場合などに、「なんとなくこれが好き」で決めることはできませんよね。

「なぜ、別の企画ではなく、この企画なのか?」

「なぜ、別の場所ではなく、ここで行うのか?」

「なぜ、別の発注先ではなく、この会社なのか?」

 以上を客観的な視点で明確にしておくことは必須です。

 どんなにビジネスライクに考えようとしても、私たちは感情と思考を切り離すことはできません。

 特に、何か愛着があったり、反対に嫌悪感が無自覚にでもあったりすると、フェアな視点で「よりよいもの」を選ぶことができなくなってしまうのです。