アピールとしてはさまざまな動作が使われる。万歳やガッツポーズのほかに、走り回る、ジャンプする、そばにいるヒトと踊る、体をたたきあう――といった少々攻撃的な要素が入る傾向があるが、要は「目立つ」ことが重要なのだ。このことを念頭に置いて、以下の話を聞いていただきたい。

“親友”は自らの生存・繁殖
につながる喜ばしい存在

 質問にあった、「会った時にとび跳ねて小刻みに手を振りながら挨拶をする」のは、たいていの場合、互いにとても仲がよくて信頼しあっている、親友のような関係の個体のあいだで起こることだろう。嫌いな相手とはそうはならないはずだ。

 進化の仕組みから言えば、こうなる。「協力して初めて成し遂げられることはたくさんあり、そうして得た利益を協力者同士で分けると、いつも協力はしないで独力でやり遂げる個体が得られる利益より、利益の量が多くなることがしばしばある」。それゆえ、相互に行われる協力行動(を行う個体の遺伝子)は、増えていくはずだ。

 ただし、である。

 自分は相手から協力してもらうのに、自分は相手に協力しているふりをして、実は協力はほとんど行わない個体(いわゆるフリーライダー、裏切り個体などと呼ばれる)が出現すると、そういう個体が、最も利益を得ることになり、裏切り個体(を設計する遺伝子)が増えやすくなる。こうなると、協力行動(を行う個体を設計する遺伝子)はやがて数が少なくなってしまい、協力行動自体が消えていく。

 しかし、ホモサピエンスの場合、裏切り個体を高い確率で見抜き、裏切り個体を記憶に残しやすい認知特性を獲得していることが、実験によって明らかにされている。

 そして、フリーライダーには協力せず、しっかり協力し返してくれる個体には協力するという特性をもった個体が出現すると、裏切り個体は、得ることができる利益が激減し、裏切り個体自体も減少する。現代人も含めてホモサピエンスは、たいていの個体がそういう特性を持っていることも確認されているのだ。

 私たちホモサピエンスは、因果関係に基づいて外界の、かなり広範に及ぶ事物事象について関係づける認知特性を有しており、そういった能力と、フリーライダーを高い確率で見抜いて裏切り個体には協力せず、しっかり協力し返してくれる個体(つまり親友)に協力するという特性とを合体させ、発達した行動を実行している。

 こうしたことからも、親友をもつということは、自分の生存・繁殖にとって有利なことなのだ。だから、親友ができた、と感じたときは「うれしい」のである。