なぜ女性は友人と会った時、とび跳ねて小刻みに手を振るの?→動物行動学者の答えが納得すぎた!写真はイメージです Photo:PIXTA

日々、野生動物の習性や生活を研究している動物行動学者の小林朋道氏。彼は、動物としてのヒトにも強い興味を抱いているという。そんな小林氏がSNSで“ヒトについて日ごろから疑問に感じていることを教えてください”と投稿したところ、多数の質問が寄せられた。ここでは「親しい友人と会った時に取る行動」の謎について解説する。※本稿は、小林朋道『モフモフはなぜ可愛いのか』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

とてもうれしいときに
“飛び跳ねる”のはなぜ?

Q 女性同士でよく見るのですが、友人と会った時にとび跳ねて小刻みに手を振りながら挨拶をするのを見て、なぜああいう行動が出るのか、他の生物にも似たような行動があるのか、気になります。ちなみに私自身もとび跳ねていると言われたことがありますが、自覚はありませんでした。

A 女性に限らず男性でも、似たようなことはある。何かとても「うれしい」ことが起こったとき、ジャンプしたり、腕を突き上げてガッツポーズをしたり。サッカー選手がゴールを決めたときなどにも見られる。

 まずは、われわれホモサピエンスがうれしいと感じるのはどういうときか、考えてみよう。好きなヒトがいて、そのヒトも自分のことを好きだとわかったとき。喉がカラカラで水が手に入ったとき。会社で昇進したとき。学校が火事に遭ったが、通っている自分の子どもが無事とわかったとき。会いたいヒト、長く会っていなかった親友に会えたとき――つまり、これらはすべて自分(正確には自分を設計した遺伝子)の生存・繁殖に有利になることが起きたときだ。以下、説明しよう。

・好きなヒト(異性)がいて、そのヒトも自分のことを好きだとわかった→繁殖がうまくいく可能性が生まれた。
・喉がカラカラで水が手に入った→生存の可能性が高くなった。
・会社で昇進した→社会的な地位が上がったことにより繁殖に有利になる(狩猟採集時代以降、社会的に地位が高い個体は、繁殖に有利だった)。
・学校が火事に遭ったが、通っている自分の子どもが無事とわかった→自分の遺伝子のコピーが無事だった。繁殖が阻害されなかった。
・会いたいヒト、長く会っていなかった親友に会えた→自分を助けてくれる、自分の遺伝子の生存・繁殖に有利になる個体に会えた(この現象は質問に直接関係するので、このあと、少し詳しくお話する)。

 うれしいとき、手を挙げて万歳したり、ガッツポーズをしたりする主な理由は次のように考えられる。(状況にもよるが)生存・繁殖に有利になった自分を他の人にアピールすることは、他の個体から尊重されやすい状況をつくることが多い。他の個体が、生存・繁殖に有利になった個体に対して好意的に接しやすくなるのは、そのほうが自身にとっても有利になる場合が多いからだ。