電車と女子高生写真はイメージです Photo:PIXTA

「心」の「発達」という視点からみると、高校進学は心の「クライシス(分岐点)」になりうる。高校に進学することは、良い方向にも悪い方向にも心が変化するきっかけになる出来事であり、それ自体は良いものでも悪いものでもない。発達心理学者が、子どもたちの心をつまずかせるかもしれない要因を探った。※本稿は、飯村周平『高校進学でつまずいたら 「高1クライシス」を乗り越える』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。

ここでは、3名の新入生の架空ケースを紹介しています。

プロフィール
Aさん……入学早々、風邪で4日ほど学校を休んでしまった。登校した頃にはすでグループができあがっており、疎外感を感じている。性格は素朴でシャイ。家から学校まで片道1時間かかる。

B君……中学からサッカーをしており、高校の部活でもサッカーを選択したものの、ハードなサッカー部の練習に疲れて授業中に居眠りするうちに授業についていけなくなった。部活と勉強、どちらも本人が納得いく結果を出せておらず自信をなくしている。

Cさん……入学早々、すぐに同じクラスの仲の良い友人ができた。また学校も家から近いため通いやすく、通学のストレスも少ない。姉が2人いるため、高校生活のイメージもできていた。温厚な性格。

通学方法や通学時間が
負担になるケースがある

 地域ごとに事情は異なりますが、高校進学とともに通学方法が変わるのはよくあることです。余談ですが、私が大学進学のために田舎から東京へ上京して驚いたのは、制服を着た小学生が集団で電車通学していたことです。なぜなら私の地元では小学生の電車通学は珍しく、そのような様子を見たことがなかったからです。「さすが東京だな」と素朴な感想がおもわず出ました。

 このように都市部に住んでいれば、中学校も高校も変わらず電車通学の人もいるでしょう。ただ、進学先の場所によっては、新たにバスを乗り継ぐ必要が出たりするなど、それまでと全く異なる経路で通学するようになる人もいるかと思います。

 ここで、新入生Aさんのケースをみてみましょう。Aさんは、中学校までは自転車通学がメインで、通学時間は15分ほどでした。進学先の高校は自宅からかなり離れていたので、電車で高校の最寄り駅まで移動し、そこからさらに自転車で30分かけて通学することになりました。通学時間は、片道1時間、往復で2時間といったところです。高校は最寄り駅からだいぶ遠かったので、自転車での通学はAさんにとって負担になりました。

 私が暮らす東京では、通勤時間帯の圧迫感の強い満員電車に揺られながら、高校に通う生徒たちの姿をよく見かけます。もちろん「慣れ」はあるでしょうが、それが苦手な人にとってはつらい時間でしょう。短い時間ならまだしも、片道1時間以上をかけて通学する生徒もいるようです。高校進学後に初めてそのような通学方法になる人にとっては、大きな変化になりますし、心のさまざまな側面にも影響を及ぼすかもしれません。

 少数ですが、高校から寮生活を始めるという人もいるでしょう。いずれにせよ、進学してからしばらくの間は、通学に気をつかうことになりそうです。読者のみなさんは、高校進学とともにどのような通学方法の変化がありましたか?それは良い変化でしたでしょうか?あるいはその逆でしょうか?