ヤクルトレディによる地道な販売で徐々に浸透

 とはいえ、当時は睡眠にアプローチする飲料の市場はまだ小さく、「腸と脳との関係」が消費者に理解されるかどうかが不透明でした。社内での検討の結果、「この価値を正しく理解してもらないと売れない」とし、「まずは限られた地域の宅配で、ヤクルトレディによる丁寧な説明が不可欠」という販売方針が固まりました。

 こうして「Yakult1000」は2019年10月、メインターゲットとして想定する30~50代のビジネスパーソンが多い関東1都6県限定で、ヤクルトレディによる宅配専用商品として販売されたのです(加えて百貨店や高級スーパーの一部店舗でも限定販売しました)。

 ヤクルトレディは1963年からあるヤクルト独自の宅配販売員制度。個人事業主である宅配員(現在はパート制度もあります)がお客さんの自宅やオフィスに出向き、直接話をしながら新商品の説明をしたり、商品を届けたりするのが特徴です。

 最初に実行したのは、ヤクルトレディやその家族たちに「Yakult1000」を飲んでもらうことでした。自身や家族で飲用して効果があると思えれば、販売時に説得力が生まれます。情報過多の現在だからこそ、なじみの人が顔を見て説明する効果は大きいと考えたのです。それは見事に当たりました。

 こうしたヤクルトレディの地道な営業や、コロナ禍のストレスフルな状況が追い風となり、売上が増加していきます。テレビCMでは各界のプロフェッショナルに登場してもらい、仕事で大切にしていることや信念を語ってもらうことで、これまでとは違う「先進的、機能的、科学的、大人向け」が浸透するようにしました。

 SNSにも「ぐっすり眠れた」「すっきり目覚められた」といった口コミが多く投稿されるようになりました。2021年4月から宅配の全国展開をスタートすると、公式サイトで「Yakult1000」の新規受付を一時中止せざるを得ないほど注文が殺到します。同年10月からは、販売チャネルをスーパーやコンビニに広げ、容量と価格を店頭用に変えた「Y1000」(150円、税別)を販売。入手しやすくなったことでさらにファンが広がりました。

 さらに2022年4月には、マツコ・デラックスさんがテレビ番組で「眠りがよくなった」「念のため2本飲んでいる」と発言したことから人気が爆発。スーパーやコンビニでは品薄・品切れが続き、入手困難な状況が社会現象にもなったのです。