DX1.0:Salesforceを本格活用。
営業本部では個人プレーを排し「オープンシェア」

 フジッコのDXは、大きく2つの段階に分けられる。第一段階の「DX1.0」は、デジタルを活用した業務改善に重点が置かれた。

 特に営業本部で業務改善が一気に進んだのは、営業本部長が旗振り役となり、「オープンシェア」という価値観を根付かせたからだ。これまで個人プレーが多かった営業本部で宝の持ち腐れとなっていた営業支援システム「Salesforce」を改めて有効活用すると決め、本部をあげてSalesforceを使ったデータビジュアライズの勉強会を開催。さらに、営業本部長の言葉を借りれば、「パクり、パクられ」を推奨した。要は、情報を共有した本人と、それをうまく活用したメンバー両者を評価することで、知見やノウハウを広めやすくしたのだ。

 今では、営業に関するほとんどの情報がSalesforceに集約され、Salesforceを見れば、そのとき一番欲しい情報にアクセスできる状態になっているという。

「オープンシェアの考え方がなかったら、いくらデジタル化したところで、一線級の情報は出てこなかったかもしれません。今はそれもSalesforce上でオープンにし、“いいね”がたくさん付くようになりました。共有し合うことで、互いを認め合う文化も醸成されてきていると感じます」(岡山さん)

「ニュー・フジッコは、みんなに大きな痛みを伴うものでした。不採算事業を整理して愛着のあった商品を手放し、働き方改革で、朝早く出社したらその分早く帰るよう言われるようになりました。がむしゃらに働くのは悪だったのかと、価値観を否定されたような気持ちになった人もいたと思います。でも、環境が整ったことで営業本部の離職率は半減。育児休業が取れる職場になり、復職も進んできました。そして、値上げ後もお客さまに支持していただいています。社員の頑張りが結果に現れてきたと同時に、DXが組織文化を変え、業務改革につながっていることを実感しています」(寺嶋さん)

DX2.0:顧客起点でデータ活用
顧客情報の一元管理がカギ

 一方で、「DX1.0」が進むにつれ、顧客情報の一元管理、商品開発リードタイムの短縮など、新たな課題も見えてきた。そこで今、「DX2.0」として取り組んでいるのが、顧客情報を起点としたデータ活用の準備だ。

「これまで商品ごとに顧客情報を管理してきましたが、一元管理できれば、昆布のロイヤル顧客が実はヨーグルトも買っているといったことが可視化され、顧客目線のマーケティングが展開しやすくなります。フジッコの商品に出会い、ファンになって選び続けていただけるまでのカスタマージャーニーを、データを駆使してより戦略的に作っていきたいです」(岡山さん)