若手とトップはやる気があっても……
中間管理職のDXアレルギーを防ぐ
従業員が主体的にDXに取り組める土壌作りにも力を入れている。岡山さんは、「若手はやる気があり、トップも変えようとしている。一方で、特に従来の仕事で評価されてきた中間管理職の間で、DXへのアレルギー反応が出ているように感じている」という。DXアレルギーは、既存のやり方を変えることへの抵抗感から生じる。「特効薬はない」が本音だそうだが、「一律トップダウンで進めるのではなく、現場の声に耳を傾け、コミュニケーションを継続していく」という。
岡山さんは、2022年まで工場で勤務し、一ユーザーとしてニュー・フジッコの断行、業務システムが新しくなり、現場から紙が消えていく様子を見てきた。「『前のやり方のほうが慣れているから速いのに』という声もよく聞いていた」と振り返る。
工場は特に、「変化=リスク」と考える傾向が強い。何かを変えることで品質に影響があってはいけないという責任感から、デジタル化にも心理的な壁があったという。加えて、これまで生産拠点ごとに地道な改善活動が行われ、その結果が今、ということがほとんどだ。一方的なデジタル化の要請は、「聖域に土足で踏み込んできた」と捉えられても不思議ではなかった。
「帳票一つとっても生産拠点ごとに違います。自分たちはもう慣れているから不便さも感じていない。変える意味を一つずつ紐解いていかないと、スタートラインにさえ立てないのです。でも、やらないとフジッコは変われない。イノベーション以前に、標準的な業務オペレーションを定めるための整理が必要です。言われたことを8時間でやるのではなく、6時間で終わらせて、2時間で付加価値の高い仕事を生み出せる会社にする――さらなる成長に不可欠な考え方だと思っています」(岡山さん)
これまでアナログだった業務をシステム化する際にも注意が必要だ。
「新しいシステムを入れるということは、5~10年はその仕組みをベースに業務が回っていくということ。そこで重要なのが、業務フローの見直しです。本当にその業務が必要なのか見極め、やめられる業務はやめていく。こうしてスリムな業務フローを作ってから、システム化に着手しています」(岡山さん)