システムは事業を加速する
「会社の文化は変えられる」という確信
寺嶋さんは、「システムが事業を加速させ、組織文化をも変えていくことに確信があった」と語る。
「私はヘルスケアの通信販売事業を担当していた際、何度か顧客システムやECシステムの入れ替えを経験しました。そのたびに実感したのが、目的をうまくシステム設計に落とし込んで刷新すれば、事業はスムーズに拡大できるということ。顧客が10万人のとき15人で運用していたものが、80万人になってもそのまま15人でできました。自分たちの能力のベースが劇的に上がり、個人やチームのモチベーションにも良い影響を与えてくれたんです。だから、システムで会社の文化は変えられると、変な確信があるんです(笑)」
社長の福井正一さんの存在も原動力となっている。福井さんはシステム部出身で、30年前には全社にパソコンを導入したり、社内イントラネットを構築したりと、フジッコのIT化の立役者だ。60代になった今もITトレンドに敏感で、DX推進委員会の委員長として自ら旗振り役を務める。最近では、「そのうちAIの経営者も出てくるだろうから、僕はいらなくなるよ」と、冗談とも本気ともつかない顔で話しているという。
経営企画部 DX推進グループの岡山浩之さんは、トップがDXを指揮するメリットを、こう語る。
「DXは正解のない取り組みです。昔ながらの組織文化の中で進めていくには、折衝や根回しが必要になります。そんな中、トップダウンで働きかけてくれたことで、意思決定のスピードが速くなりました。『もしも社長がITに興味がなかったら』ですか? ここまで一気に変わることはなかったでしょう。社長を説得するだけで、かなりの時間を要していたと思います」