データサイエンティスト講座は、
初回から150人が参加希望

 DX人材の育成にも力を入れている。データサイエンティストに関しては、必要なスキルを学べる独自のeラーニング環境を用意し、受講希望者を募ると、150人以上が手を挙げた。特に、30代後半~40代の従業員からの関心が高いそうだ。

「大事なのは、単にデータサイエンスの知識をインプットするのでなく、実務に生かせるようにすることです。そこで、社内でデータ分析のコンテストを開催し、新しい分析手法やアイデアを評価する制度を設けました。学びの成果を披露する機会を設けることで、モチベーションを高めていきます」(岡山さん)

 さらに、社内公募・副業制度を充実させ、自らキャリアを切り拓く機会を提供している。学びを評価や報酬、キャリアアップに直結させることで、従業員の意欲を引き出す狙いだ。

「働き方改革」ならぬ「働きがい改革」。「主体的な仕事をし、自分でキャリアを切り拓けるようにすることが、一番モチベーションにつながる」と寺嶋さん。 Photo by M.S.「働き方改革」ならぬ「働きがい改革」。「主体的な仕事をし、自分でキャリアを切り拓けるようにすることが、一番モチベーションにつながる」と寺嶋さん。 Photo by M.S.

人事DXとタレントマネジメントの両輪で、
人的資本経営を促進

 2022年、フジッコは、人的資本経営と人事領域のDXを実現するため、クラウド統合人事システム「COMPANY」を採用した。

「人事領域のデジタル化を進める中で、SaaSを中心に多くのシステムを導入してきました。結果、従業員が各システムにログインするのがいちいち面倒で(笑)。COMPANYは、人事管理、給与計算、勤怠管理、研修受講履歴、タレントマネジメントなど人事関連の機能が一通り揃っているので、利便性が向上することを期待しています」(寺嶋さん)

 今後は、大学の経営研究室と連携し、人事領域における各施策のインパクトを分析していく方針だ。例えば、従業員エンゲージメントの数値が業績にどのような影響をもたらすのか。人材育成に力を入れることで、業績にどう跳ね返ってくるのか。データを使って相関関係や打ち手を示せれば、より社内外の理解を得やすくなるだろう。

 寺嶋さんはさらに、多様な人事情報を一元管理できるCOMPANYの特徴を生かし、AIを活用したタレントマネジメントについても展望を語る。

「人事領域においても、AIが仮説立案までしてくれる時代が数年以内に来るでしょう。今はまだ想像に過ぎませんが、『このプロジェクトを成功させるなら、どんな布陣がいいか』と問えば、経歴や実績、スキル、パーソナリティなどから候補者を挙げ、『この人をメンバーに加えれば、売上が何%上がる』といった具合に提案してくれるかもしれません」

 あくまで最終判断は人間だが、その精度を上げるためにも、今からAIフレンドリーにデータを整備しておいて損はないだろう。

「世の中が劇的に変わっていく中、私たち食品産業は値上げもしにくく、低成長と言われています。それでも、毎日体に良い食事を摂ることが健康寿命の延伸と幸せにつながる。その使命を果たし続けるために、既存業務の労力を減らし、新たな知恵を生み出す時間と人材を増やしていきたいです」(寺嶋さん)