他者とコミュニケーションを取ること、情報を伝え合ったりすること、学ぶことや考えることに、「ことば」は欠かせません。言語聴覚士(げんごちょうかくし)の寺田奈々さんは、お子さんのことばの獲得について相談に乗ったり、子どものことばを引き出すレッスンを行ったりしています。
前回は、絵本の読み方についてをテーマにお話してもらいましたが、今回は著書『発達障害&グレーゾーン幼児のことばを引き出す遊び53』(誠文堂新光社)の内容をもとに、ことばそのものの発達について詳しく解説してもらいます。(構成/金井弓子)

【プロが解説】子どもの「ことば」が育つ「4つのステップ」を知っていますか?Photo: Adobe Stock

ことば」の発達は4ステップにわかれている

「ことば」はそれだけが単独で育つものではなく、体や心のさまざまな成長・発達とともに育っていきます。生まれたばかりの赤ちゃんが最初に発する音は産声ですが、そこから、笑い声やリラックスした「あー」「うー」などの発声が徐々に増えていきます。
「ことば」を理解したり話したりできるようになるまでは、大きく4つのステップがあります。

【ステップ1】
 ステップ1は生後0~3ヵ月頃。この時期の赤ちゃんは、流れるメロディやリズムのように周囲のおしゃべりを聞いているようです。
 胎児の頃からママのおなかの中でぼんやりと耳にしていた母語の、本格的な聞き取り練習が始まったばかりです。

【ステップ2】
 ステップ2は生後4~6ヵ月頃。首がすわり、視界が広がり、視界に入ったものを目で追うことが上手になっていきます。
 目からの情報と耳からの情報を取り込んでいけるようになるのがこの時期。人の声や物音がした方向を向くようになります。
 くぐもった声から、だんだんはっきりとした声が出せるようになっていきます。

【ステップ3】
 ステップ3は生後7~9ヵ月頃。記憶力が徐々に育っていき、家族とそれ以外の人が区別できるように。
 人見知りがはじまる子もいます。他者への興味関心なども関係する、心の成長過程の現れです。
 離乳食がはじまり、お口をよく使うようになると、「ママママ」「ダダダダ」 のように、同じ音を繰り返す喃語(なんご)が話せるように。声を出して人の注意を引くなど、声を使ってコミュニケーションが取れることも出てくるかもしれません。

【ステップ4】
 ステップ4は生後10~12ヵ月頃。1歳前後の時期には、もののイメージを頭の中で思い描く力が育ちます。発見したものや取ってほしいものを、直接指で差して他者に示したりします。
 それから、相手の視線の先を追ったり、周囲の人からのことば掛けを聞き取り、身のまわりの簡単なことばを理解できるようになります。ことばのお話しはじめには個人差がありますが、この時期から少しずつ意味のあることばをお話しはじめます。
 このように、生まれたばかりの赤ちゃんはゆっくりと時間をかけて、ことばを理解し、お話をする力を身につけていきます。

【プロが解説】子どもの「ことば」が育つ「4つのステップ」を知っていますか?

いきなり「話す」ことはできない

 私たちが「ことば」を話せるようになるまでには、いろいろな準備があります。まずは、耳の準備。音がよく聞こえ、聞き分けられること。音が聞き取れるようになると、「どんな意味だろう?」と周りの状況と結びつけてことばの意味を探りはじめます。

 さらに、気持ちいい・痛い・嬉しい・悲しい・びっくりなどの感情を抱き、それを周囲の人に伝えたい!という気持ちが育ちます。それから、声がよく出て、くちびるや舌がよく動くことも大切ですね。

 このように、ことばと心(感情)そして体の発達は、それぞれが並走し、合流し、また複雑に分かれながら一緒に育っていきます。

【プロが解説】子どもの「ことば」が育つ「4つのステップ」を知っていますか?
寺田奈々(てらだ・なな)
【プロが解説】子どもの「ことば」が育つ「4つのステップ」を知っていますか?

慶應義塾大学文学部卒
大学卒業後、2年過程の養成課程で言語聴覚士免許を取得。総合病院、耳鼻科クリニック、専門学校、区立障害者福祉センターなどに勤務。年間100症例以上のことばの相談・支援に携わる。臨床のかたわら、「おうち療育」を合言葉に「コトリドリル」シリーズを製作・販売。著書に『0~4歳 ことばをひきだす親子あそび』(小学館)『ことばを引き出す遊び53』(誠文堂新光社)『絵をみてまねっこ!いっしょにできたねおしゃべりカード』(合同出版)がある。専門は、お子さんのことばの発達全般・吃音・発音指導・読み書き学習面のサポート・大人の発音矯正。