ね、ミレイユっていつもスケスケだけど、目のやり場に困ったりしないの?
そのことが長い間気にかかっていた私ですが、ある日、同じ広報部に勤めるロベールに質問を投げかけてみました。男性が少ない広報部で昔から頑張るロベールはアーカイブ部門の責任者。『ウォーリーを探せ』のウォーリー似の彼は実に多才。プロのフォトグラファーでもあり、私が企画するプレス・ツアーにもよく同行してくれていたので、いつしか気の置けない仲間になっていました。
ミレイユの大きな笑い声がいつものように廊下に響き渡っていたある日、私はロベールに聞いてみました。
「ね、ミレイユっていつもスケスケだけど、目のやり場に困ったりしないの?」
ロベールは、うーんと少し考えた後、言いました。
「しないね。なんていうか、あそこまで露出されると、男には響かないんだよ」
「色っぽくないっていうこと?」
「うん。ちっとも色っぽくない。でも、別に異性ウケしようと思ってスケスケを着てるわけじゃないでしょ」
そう言われてみれば、ミレイユにはそんな意図はなさそうです。
「じゃあ、どうして色っぽい恰好をしているのかしら?」
と私が呟くと、ロベールは首を横に振り、「君は全くわかっていないな」という顔をしながら言いました。
「彼女がスケスケを着るのは、媚びるためじゃない。これが私です、っていうメッセージみたいなもんだよ」
「私はこういう人間ですが、何か?」と割り切っているパリジェンヌ
フォトグラファーのロベールは視点が鋭く、物事の本質を見抜くのが得意です。彼の目に映るミレイユは、スケスケを着て自分をさらけ出す、等身大の女性です。「私はこういう人間ですが、何か?」と割り切っているパリジェンヌです。
なんとも爽快ではありませんか。ミレイユのスケスケがちっともイヤらしい気がしない理由がやっとわかり、私は快哉を叫びたい気持ちでした。彼女が女性ウケするのも無理ありません。媚びない、ありのままのその姿はロベールが指摘したように、強いメッセージを発信しているのです。
「私は私です。これでいいんです」
肩で風を切って生きているミレイユは、素の自分を衆目にさらけ出す勇気を持ち、逃げも隠れもしないという覚悟を持つ女性です。
そんな彼女の真の魅力を理解した私は、「あんなふうに生きてみたい」と憧れるのですが、どこから始めていいのかわかりません。スケスケを着ればそれでよい、という次元の話ではありません。問題はそこです。
どうすればありのままの自分をさらけ出すことができるのか。私は図らずも命題にぶち当たってしまったのです。
※本稿は『パリジェンヌはすっぴんがお好き』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。