会社を変えようとするなら
オフィスの「主」を味方につけろ

 時短改革をするうえでは、社長が「現場の主」たちを是が非でも味方につけなければいけません。

 現場の「主」はいわゆる「ノンキャリア」であることも多い。管理職や経営陣に「出世」することなく、現場に居続けたことで、その部署の仕事を誰よりもわかっていらっしゃる方です。「自分がこの部署を支えている」と強烈に自負しながらも、現場のみんなを陰から支え、後輩たちが「出世」していくのを見守っている。

 内部昇格した経営者なら、若いころたいへんお世話になった「主」の方々がいるはずですし、いまでも仲良くしてもらうよう努めているはずです。しかし、そのまま「主」が時短改革に協力してくれるという甘い見通しのまま、根回しもせずに改革を進めようとすると「主」は手強い反対勢力に回ってしまうのです。

 現場の「主」が時短改革に反対しようとすれば、じつに簡単です。

 経費精算の時短をはかるとしましょう。たとえば、「社の経費を使うには、社のクレジットカードで支払わなければならない」と決めるとします。これにより現金や私用カードによる立替という行為を全廃することができます、理屈の上では。

 しかし、そこに「主」が反対すると、どうなるか。

・贈答品や手土産に頻用している某老舗百貨店は、「請求書払い」でないといけない。その百貨店の社内ルールで、カード払いでは当社担当の外商さんの営業成績にならないためである

・接待で重宝している某老舗の料理店や料亭も、「請求書払い」でなければならない。そもそも彼らはその場で客に支払わせる「おあいそ」などは、けっしてしない

「主」が反対している以上、その部署の経費精算改革は、それでストップします。しなければなりません。

 では某百貨店さんに交渉してきましょうか、とか、某料理店さんなどの例外を除いて、ほかはコーポレートカードに統一すればいいじゃないの、というわけにはいかないのです。

「主」は、反対だという意思を表明しておられる。そのために挙げた理由自体には、意味はないですが、ひとたび「NO」と表明されてしまったら、もうその時点で時短改革は失敗すると覚悟しておいてください。