ジョースター家に受け継がれる
「勇気」と「正義の心」

 杜王町には邪悪なスタンド使いがひそんでおり、仗助はその敵と戦うために、父と初めて対面することになります。そして、ジョセフと仗助が二人だけでいる時に、「自分と周囲を透明にするスタンド能力を持った赤ん坊」に出会ってしまいました。

『ジョジョの奇妙な冒険』では、「スタンド使いはスタンド使いにひかれ合う」という法則を前提として物語が進みます。よって、彼らと「透明の赤ちゃん」との遭遇は必然だったといえるでしょう。不思議な出来事が重なって赤ん坊が水中に落下し、仗助たちが救出しなくてはならない事態になりました。

 その段階で赤ん坊のスタンド能力は「正体不明」であるため、赤ん坊は自分に近づくすべての人に対して、敵味方の区別なしに攻撃(=透明にする)を仕掛けてくる可能性がありました。

 少なくともこの赤ん坊に触れるからには、自分も透明にされることを覚悟しなくてはなりません。それらの可能性を認識した上で、仗助は躊躇なく水に飛び込みました。

「どこだ!! この辺のはずだ!! おれも透明になんのはかまわねえから触ってくれ! 早くッ! 早く触れ!」(東方仗助/『ジョジョの奇妙な冒険』34巻、「やばいものを拾ったっス!その(3)」)

 透明であるがゆえに、無色透明の水中にいる赤ん坊の姿は見えず、仗助はやみくもに水中を探し続けました。そして、その子の命が危ぶまれた瞬間、ジョセフは突如自分の手首を深く切りつけます。

 ジョセフは、赤ん坊のスタンド能力によって、その子が位置する中心部から水が透明になっていくことを予想し、赤い血で水を染めて、赤ん坊の居場所を特定しようとしたのです。この出血量は高齢のジョセフの命を危うくするほどでした。そのため、仗助は父の「勇気」に心が動かされます。

「こんなこと普通は思いつきもしねえっスよ 見たこともねえ他人の子供のために……ここまで」(東方仗助/『ジョジョの奇妙な冒険』34巻、「やばいものを拾ったっス!その(3)」)

 しかし、仗助もまた、自分が透明にされることを厭わずに赤ちゃんを助けようとしていました。仗助とジョセフはいずれも、誰か見知らぬ他人のために、自分の命を捧げることができる「勇気」を持った人物だということが、ここで読者に示されます。離れて暮らしていたにもかかわらず、彼らには親子として共通する要素があったのです。これはジョースター家に継承されてきた「正義の心」を意味していました。