図は縦軸に1人当たりGDPの年平均成長率、横軸に人口の年平均増加率を示したものである(1980年から2023年までの増加率)。図に見るように、日本とブルネイを例外として、人口増加率が低いほど1人当たりGDPの成長率が高いことが分かる。決定係数は図中に示されているように0.383と、相関関係がある(回帰式と決定係数は日本とブルネイを除いたもの)。

 これを見ると、日本は明らかな外れ値である。人口が増加しないほうが1人当たりGDPを増やすためには有利であるのに、その利点を使えなかった国ということになる。

 多くの人は、人口減少が日本のもっとも重大な問題と考えているようである。しかし、1人当たりGDPが伸びなかったことのほうがさらに大きな問題ではないか。

書影『日本人の賃金を上げる唯一の方法』(PHP研究所)『日本人の賃金を上げる唯一の方法』(PHP研究所)
原田泰 著

 なぜ政治家や役人が人口に夢中になるかというと、人口が増えないのは、誰のせいとも特定できないからだろう。1人当たりGDPが伸びないのは、私に言わせれば金融政策の誤りで景気回復を度々遅らし、構造改革ができなかったからだ。金融政策の誤り説には賛同しない人が多いことを承知しているが、ほとんどの人が構造改革をできなかったことには同意する。

 しかし、どういう構造改革をすべきだったかについては多くの人が答えられない。私は、これまで述べたように、あらゆる分野で生産性の上昇を邪魔するような政策が行われているからだと答えたい。多くの人々が、人口減少が問題だという。

 たしかに問題だが、1人当たりのGDPが増加しないことのほうが、より大きな問題ではないか。国際比較をすると、人口が減少している国ほど1人当たりのGDPが増加する傾向があるのに、日本は外れ値である。

 日本がこのような外れ値になるのは、生産性を上げようとすると、あらゆるところで邪魔が入るからだ。異次元の少子化対策よりも、まずこのような邪魔を除去することが大事である。