エバーグレーズは巨大な淡水湿地で、たくさんの鳥、ワニ、魚、カメ、そして私の主な研究対象であるラバー グラスホッパーが生息しています。しかも、ワニを食べたり、エアボートに乗ったりできます。もし、あなたが私を訪問できそうなら、ぜひご連絡ください」

 との返事をもらった。

 これは絶好のチャンスではないか。お邪魔したい旨を伝え、アメリカ行きの準備を進めた。

日本にはいない大きくて
飛べない「ノロマ」なバッタ

 海を越えて文通相手に会いに行くとか、ドラマチックである。空港でホイットマン教授がお出迎えくださった。

 教授は、色んな国の留学生を引き受けた経験があり、私のつたない英語も理解してくれた。おかげでなんとか英語で会話することができた。すっかり打ち解け、教授のファーストネームのダグラスから、ダグと呼ぶことになった。日本だったら、教授を下の名前で呼ぶのは畏れ多いが、アメリカではこれが普通とのこと。

 滞在中は、ダグの自宅の空き部屋を使わせてもらうことになった。緑が豊富な庭にはリスがいて、穏やかそのものだ。奥さんのキャシーは弁護士で、元々はニューヨークでとんでもない金額を稼いでいたそうだ。ダグがイリノイで職を得たため、一緒に付いてきたが、収入は激減したとのこと。それでも教授より稼いでいて、お金には困っていないという。

 次の日から、さっそく大学の研究室にお邪魔する。実験室、飼育室など、研究のための装備は万全だ。ダグのグラスホッパーは、人が余裕で入れる大きさの金網のケージで飼育されていた。

 幼虫は、光沢のあるシックな黒い体色に黄色の縞模様があり、淡い紅色の脚を持ち、ツウ好みの体色をしている。成虫はオレンジ色で、翅を開くと真っ赤な後翅が出現するが、体のわりに翅が貧弱で、飛ぶことはできない。