ずっしりと重量感のある豊満なボディー。日本にはいないタイプのヤツだ。通称は「イースタン ラバー グラスホッパー(Romalea microptera)」だという。

 辞書で「ラバー(Lubber)」の意味を調べたら「ノロマ」だった。ノロマ呼ばわりはあんまりだから、親しみを込めて「ラバー」と呼ぶことにする。

ラバーの体温測定は
人間と同じ要領だった

 ラバーはグルメで、色んなものを食べたがるそうで、スーパーで買ってきたロメインレタスや、料理の際に出たニンジンやマンゴーの野菜くずもサプリメントとして与える。ノロノロ動くため、エサ替えも楽だ。ラボでは、学生たちが行動実験をする様子や、解剖の仕方を見せてもらった。ラボ見学は、動物園のバックヤード見学に通じる楽しさがある。

 そして、前から知りたかった技術を、ダグに教えてもらうことになった。

 ダグは、グラスホッパーの体温調節行動に関する論文を発表しているが、どうやって体温測定をしているのかを知りたかった。人間だったら体温計を脇の下に挟んで測定するのが一般的だが、バッタではどうするのか。論文を読んでもいまいちピンと来なかったので、実演してもらったのだ。

書影『バッタを倒すぜ アフリカで』(光文社)『バッタを倒すぜ アフリカで』(光文社新書)
前野 ウルド 浩太郎 著

 すると、メガネケースくらいの大きさの測定器本体に、センサーの根元を差し込んでセットし、先端が3ミリの細いワイヤーをラバーの首の後ろにある前胸背板の隙間に挿入していた。なるほど!ここが人間の脇代わりになっていたのか。「百聞は一見に如かず」で、実際に見られるか見られないかでは大違いである。

 1週間ほどアメリカ時間に体を慣らしてから、いよいよフィールドに向かうことになった。時差ボケのままフィールドワークを行うのは過酷すぎるためである。

 この間にいただいた、BLT(ベーコン、レタス、トマト)のハンバーガーは、ベーコンがカリカリに焼かれクリスピーでめちゃウマだった。