ほかにも魅力的な温泉がある

 ガイザーの見学後は現地で解散です。長年の念願が叶い大満足でしたが、せっかくネバダ州まで来たのですから、温泉に入浴したいところです。周囲には野湯や素朴な温泉施設が点在しており、筆者が訪ねた中でよかった温泉をふたつ紹介します。

1. 原野の中のスペンサー温泉

温泉は長い未舗装路の先にあります温泉は長い未舗装路の先にあります

 まずはリノから車で東へ3時間の場所にあるスペンサー(Spencer)温泉。ネバダ州を東西に貫く国道50号線をひたすら東へ進みます。温泉の看板で左折し、未舗装路を道なりに進めば温泉の湧く丘に到着です。

源泉は左に見える金属製の柵で保護されています源泉は左に見える金属製の柵で保護されています

 源泉は4ヵ所ありますが、一番快適だった露天風呂は上の画像のものです。金属製の柵で保護された源泉から直接露天風呂に湯が注がれています。完全な野湯ですが、脇にウッドデッキの脱衣場があります。見渡す限りの原野の中で豪快な野湯を楽しめます。

プロングホーンというシカの群れが遠くに見えましたプロングホーンというシカの群れが遠くに見えました

アメリカの野湯のマナー

 露天風呂には先客がいました。アメリカの野湯を楽しむためのふたつのコツを紹介します。ひとつ目はクロージングオプショナル(Clothing Optional)、「水着でも裸でも自由」ということです。先客が水着を着ていても、裸で入浴してかまわないですし、その逆も自由です。相手の着衣の有無は気にしないというのがアメリカ流です。ただ、先客は水着を着た女性が一人だけで、あとから来たのが男性という場合は、断りを入れたほうがよいでしょう。なお、これは野湯や一部の入浴施設に限ったことで、ホテルの温泉プールなどでは水着の着用が求められます。

 ふたつ目は、声に出して挨拶すべきということです。日本では無言のまま先客に会釈して入浴することが多いですが、まずは「こんにちは」から始まり、会話を交わすのがふつうです。これは多民族で成り立つアメリカでは、出会ったときの警戒心が強いので、「自分は安全で、敵意のない人間である」とアピールする習慣があります。特に、温泉では服を脱いで無防備な姿になるので、なおさらです。アメリカ映画のように、ひと言の挨拶がきっかけで会話が始まります。筆者は「この温泉に浸かりたくて、東京から来ました」と笑顔で切り出すようにしています。

2. 貸切りできるフェザーリバー温泉

受付から温泉までは木立の中の歩道を歩いていきます受付から温泉までは木立の中の歩道を歩いていきます

 翌日はリノから北西へ150kmの場所にあるフェザーリバー(Feather River)温泉を訪ねました。川沿いの露天風呂は予約が必要で、2時間の貸切り制です。受付の先の坂を下ると目の前に川が見え、右手の土手に「日」の字型の露天風呂があります。岩壁側の浴槽は大きめで、硫黄臭のする透明な湯で満たされています。湯が勢いよく浴槽に注いでいるため、湯面は波立ち、粒状の白い湯の華が大量に舞っています。一方、川側の浴槽は小さく、ひとり用のサイズです。小さな膜状の湯の華が表面に浮かんで白濁していますが、硫黄臭は感じません。管理人の話では、ふたつの源泉はまったく別ものとのこと。どちらも40℃前後の適温。加温も加水も必要ない絶妙な温度の源泉がふたつもあるという貴重な温泉です。

 なお、川は公有地ですが、温泉の湧く斜面は私有地だそうです。にもかかわらず、「ときどき、川の温泉を誰もが自由に使えないのはおかしいという野湯愛好家からのクレームがあるので、完全な予約制にした」と管理人が嘆いていました。どうりで、受付の門が頑丈でした。

 ちなみにこの日の朝ごはんと昼ご飯はこんな感じでした。

 

別の角度から見たガイザー。噴泉と蒸気の様子がよくわかります別の角度から見たガイザー。噴泉と蒸気の様子がよくわかります

 アメリカには、魅力的な野湯が数多くあり、野湯を紹介する専門のガイドブックが何冊も出版されています。筆者は100を超える温泉を訪ねてきましたので、別の機会に特集したいと思います。

記事で紹介した温泉

※本記事は、2024年6月1日現在のものです。