とはいえ、塾での指導に携わる私たちから見れば、「もっと早く塾に通い始めていれば」と感じる生徒も少なくありません。高校受験のための塾通いの必要性やそのタイミングを決める際には、以下の3つのポイントを考慮すると良いでしょう。

(1)公立中学校の定期テストで5科目合計400点(1科目80点平均)をクリアしているか。
(2)自立学習が身についているか。
(3)難関私立高校や独自問題を出題する公立都立高校を受ける予定があるか。

(1)のポイントは、公立中学校の定期テストの点数です。1科目平均80点以上が取れていれば、おおむね公立中学校の授業がきちんと身についていると判断しても良いでしょう。

(2)のポイントは、自立学習習慣の有無です。毎日の勉強習慣が確立していて、定期テストや検定試験に向けた勉強を計画的に進められれば、通塾時期を繰り下げることができます。自立学習が身についていないなら、塾を学習のペースメーカーとして機能させるのが賢明です。

(3)のポイントは、特別に高度な受験対策が必要かどうかです。早慶附属のような難関私立高校の場合、遅くとも中学2年生の時点で、塾に通い始めることが望まれます。

 また、高難度の入試問題を出す公立・都立高校に挑戦する場合、通信講座や講習会だけで対策をすすめることも可能ですが、中学3年生からは塾で対策したほうが効率的です。

図表:「自立学習の習慣化」成功した高校受験パターン同書より転載 拡大画像表示

勉強が得意な子には逆効果!?
「早期からの通塾」による弊害

 難関高校に合格する生徒は、早い時期から通塾していると思うかもしれません。しかし、現場の感覚では、まったくそんなことはありません。中学3年生になると自立学習を身に付けた優秀な子どもたちが一斉に入塾するからです。

 彼らは自立学習を武器に、早期通塾組をあっという間に追い越します。中学3年生からの通塾で、難関公立・都立高校や、早慶附属校に間に合う生徒が毎年出ます。

 早期の塾通いが高校受験で必ずしも有利に働くとは限りません。自分自身のペースで勉強ができなくなり、自学自習の能力が育たない恐れがあること、また、小学校時代に英語や数学の学習を進めていた場合、中学1年生の塾の内容を物足りなく感じることが考えられます。進学塾では、中学2年生以降に優秀な生徒が塾に入りやすいように、中学1年生ではカリキュラムの進度を抑えているからです。英語や数学を進めて「逃げ切り勝ち」を目指す子は、早期の塾通いが足かせになってしまう場合があります。