相次いで発覚した損害保険ジャパンの出向者による契約情報の漏えい問題。根っこは、トップラインやマーケットシェアへの過度なまでのこだわりだった。それが色濃く表れているのが、6月に公表されたカルテル問題の調査報告書だ。損保業界が驚愕した調査報告書の中身を読み解いていく。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)
損保ジャパンの出向者が相次ぎ
代理店の契約者情報を本社に漏えい
Q 損害保険ジャパンによる契約情報の漏えいが話題になっていますね。
A 7月12日に、みずほフィナンシャルグループと親密な保険代理店、トータル保険サービスが公表した契約情報の漏えいですね。損保ジャパンから出向していた社員が、出向元である損保ジャパン本社に約2700件の契約者情報を漏えいさせていました。
Q 自社を含む19社の損保会社の情報で、保険契約者名や保険種目、保険期間、保険料、トータル保険サービスの担当者名などのデータを本社に送っていたのですね。
A 2019年から5年にわたって情報を漏えいさせていたようです。それ以前にも行っていたかもしれませんね。
Q トータル保険サービスが公表した後、横浜銀行の親密代理店である朋栄も同様の情報漏えいがあったと公表しましたね。
A こちらは、アパートローン利用者向けの火災保険契約者の情報漏えいです。同じく、損保ジャパンの出向者が本社に情報を送っていました。
Q いったい何のためにやっていたのでしょうか。
A マーケットシェアを把握するためのようですね。両者ともに損保ジャパンが代理申請会社ですので、シェアには特に敏感になっていたのではないでしょうか。
Q それならばシェアだけ伝えればいいような気もしますが……。
A 全くです。恐らくですが、他社の保険を販売している募集人を攻略するなどの理由があったのかもしれませんね。
Q 今回、この情報漏えいが発覚した経緯は何だったのですか。
A 5月23日に、損保各社の契約情報が保険代理店を兼ねる一部の自動車ディーラーなどを通じて、乗り合いしている他の損保に漏えいしていたことが発覚しました。その実態を調査している過程で、今回の情報漏えいが見つかったようですね。
Q なるほど。伏在調査をしている中で判明したのですね。他損保でも起こり得る事態なのかもしれませんが、損保ジャパンの情報漏えいが目立っていますね。
A シェアやトップラインを過度に意識する傾向が強いのでしょうね。それは、損保ジャパンのカルテル問題を調べていた調査委員会が、6月11日に公表した「調査報告書」に色濃く表れています。
Q 損保業界が驚愕した報告書ですね。