三菱UFJモルガン・スタンレー証券Photo by Yasuo Katatae

証券取引等監視委員会は6月14日、三菱UFJ銀行と三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーMUFG証券の3社で銀行・証券間の違法な情報共有などの金融商品取引法違反が複数認められたとして、金融庁に行政処分を行うよう勧告した。持ち株会社の三菱UFJフィナンシャル・グループは、これまで銀証連携の規制緩和を求めてきた経緯から、相応の“けじめ”を付ける必要がある。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)

三菱UFJグループ3社へ処分勧告
金融業界と当局が納得する “けじめ”とは

 証券取引等監視委員会から勧告を受けたのは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下の三菱UFJ銀行と三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーMUFG証券の3社。金融庁は勧告を受け、業務改善命令などの行政処分を出す方向で検討に入った。

 監視委が指摘した法令違反は、銀行と証券会社の間で不適切な顧客情報の共有と、登録金融機関(銀行)による有価証券関連業の禁止だ。

 銀証間で顧客の非公開情報の共有は制限されており、「ファイアーウォール(FW)規制」と呼ばれる。情報が共有されて営業活動に使われると、顧客は経済合理性に基づいて銀行や証券会社の提案を判断できなくなったり、競争環境をゆがめたりする恐れがあるからだ。

 例えばある企業が、融資の取引がある銀行に対し、社債発行など資金調達について相談し、その情報が銀行の系列証券会社に共有されたとする。その証券会社が社債引き受けなどの契約を得られない場合、企業に対する融資条件が不利になるといった圧力が加えられかねない。

 銀行による優越的地位の乱用の恐れがあり、他の証券会社は公正な競争環境で営業活動ができなくなる。FW規制と銀行の有価証券関連業の禁止は、主にこうした事態を防ぐために定められている。

 今回の勧告の中で監視委は、三菱UFJ銀行の優越的地位の乱用は認定しなかった。また、組織性も認められず、違反行為によって経済的な損失を被った企業もいないという。

 だが、それで済む話ではない。

 FW規制について、メガバンクは長年にわたって緩和を求めてきた。MUFGは規制緩和の旗振り役だった手前、その流れを停滞させないために業界や金融当局を納得させるけじめが欠かせない。

 次ページでは、今回判明した法令違反の詳細と、けじめの“最低ライン”について解説する。