写真:三井住友銀行Photo by Satoru Okada

証券取引等監視委員会は9月28日、SMBC日興証券の元副社長が逮捕、起訴された相場操縦事件について、同社への処分を金融庁に勧告した。勧告はさらに、相場操縦とは無関係のはずの、三井住友銀行と日興の間で、いわゆるファイアウォール規制に反した情報共有があった点にも言及。2社の持ち株会社である三井住友フィナンシャルグループの責任論が強まっている。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

後半の記述は「三井住友銀行」が中心
相場操縦とは無関係だが深刻な問題

「サプライズだった」――。9月28日、証券取引等監視委員会が金融庁に処分を勧告した内容を見て、三井住友銀行(SMBC)幹部は驚愕の色を隠せずにいた。

 勧告の対象は、SMBCと共に三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)の100%子会社であるSMBC日興証券だ。昨年11月に監視委が同社を強制調査し、東京地検特捜部が元副社長ら幹部を逮捕、起訴した相場操縦事件について、金融商品取引法に違反していると指摘した。

 顧客の大量の株式を買い取って市場外で売り出す「ブロックオファー」の際、日興が自社で買い注文を出して株価を維持したり、買い手の顧客に売り出しの日を事実上伝えるなどの行為が違法だと断じたわけだが、それだけにとどまらなかったのだ。

 監視委は同じ発表文の中でこれと同程度の字数を割いて、全く別の問題についても断罪した。SMBCと日興が、顧客である上場企業の要求に反して顧客の情報を共有していた事例が3件あり、こちらも金商法に違反していると指摘。勧告の対象はあくまで日興だが、まるでSMBCへの処分を勧告しているようにさえ読める。

 銀行と証券の間の情報共有を規制する「ファイアウォール」は今年6月、上場企業の顧客を対象に緩和され、銀証間での情報共有を行うと事前にホームページなどで告知しておけば、顧客が停止を求めない限り可能となった。

 3件は、いずれも顧客が情報共有の制限や停止を求めており、監視委は「規制緩和された現在でも、同じ事案が起きたら問題になる」と見る。

 折しも金融庁の金融審議会では、規制緩和の対象を、上場企業から個人や中小企業に拡大すべきかどうかが議論されており、銀行業界が緩和を強く求めてきた経緯がある。

 そもそも相場操縦事件についても、事実上強い立場にあるSMBC出身幹部の影響や責任が取り沙汰されてきた。これとは別に、同行が深くかかわる新たな問題が噴出したとあって、SMBCやSMFGトップの責任論、そしてファイアウォールの規制緩和の議論にまで飛び火することは避けられない。