手榴弾が爆発して死亡、
軍紀訓練で倒れるも仮病呼ばわり

 死亡事故は、5月21日~28日の1週間の間に2件も起きた。

 最初の事故は、韓国中部の世宗(セジョン)市にある陸軍訓練所の第32師団で5月21日に起きた。

 野外訓練所で手榴弾の使用訓練の最中に20代の兵士が安全ピンを引き抜いた状態のままで手榴弾を投げずにいたため、手榴弾が爆発。兵士は死亡、訓練を指導していた30代の教官は重傷を負った。

 亡くなった訓練兵の母親が軍に寄せたメッセージには、息子の死で正気ではいられないであろう状況の中にありながらも、一緒に訓練を受けていた同僚兵たちに、トラウマや心の傷を残してしまったのではないかという思いが吐露されていた。

 5月23日に北東部・江原道(カンウォンド)の陸軍12師団訓練所で起きた死亡事故は、その痛ましさに大きな波紋が広がっている。事件前日の22日、就寝時間に騒いでいた6人の訓練兵が、「軍紀訓練」(いわゆる懲罰的な訓練)を命じられた。翌23日の午後、屋外で訓練中に1人の20代の訓練兵が体調不良となり、訓練所外の病院に搬送されたものの、2日後に死亡したというものであった。

 一部の報道によれば、訓練の対象となった6人は、20kgとも30kgともいわれる軍装備の荷物を背負わされ、全力疾走や、腕立て伏せをさせられていたという。亡くなった訓練兵は顔色が悪く、呼吸も乱れ、体調不良を訴えていたものの、「仮病」と見なされ取り合ってもらえなかったことが、最悪の事態を招いたとも指摘されている。

 訓練兵は各訓練所に入隊後、5週間の訓練期間を経て、各部隊へと配属される。入隊1週目には体やメンタルのチェック、さらに適性検査などが行われるが、この段階で心身の問題や、訓練・兵役生活に不適性とされた場合、帰宅措置となる訓練兵もいるという。

 その後、2週目からは基礎体力強化を含めた実戦訓練へと進行していく。今回死亡事件が起こった訓練兵たちはどちらも、実戦訓練期間中の事故であったという。

 筆者も現在、長男を兵役に送っている立場であり、相次ぐ訓練中の死亡事故は他人事ではない。殉職した兵士の親の気持ちを思うといたたまれない。