日本医師会会長選挙で現会長再選が確実視されるも、対抗馬を「泡沫候補」と切り捨てられない理由Photo:PIXTA
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。

「日医が一枚岩にならないといけないと、2年前に松本(吉郎)さんを我われが担いだ。結果、310票対64票だった。今回、その数字が(再び)試される。『攻める医師会』『強い医師会』をつくるために、皆さん一致団結して380票(満票)をめざして頑張ろうではありませんか」

 6月22日に行われる日本医師会会長選挙。2期目を狙う松本吉郎氏(埼玉)の選挙対策本部事務所開き(6月2日都内)で、乾杯の音頭を取り、そう呼び掛けたのは、愛知県医会長の柵木充明氏だ。

 今回の日医会長選に立候補したのは松本氏と、前日医副会長の松原謙二氏(大阪)。経歴やその主張は表に示したとおりだ。この2人の対決という構図は、2年前と同様。22年の選挙では、松本氏が310票を獲得し、64票だった松原氏を大差で退けた。

 日医の役員選挙は、全国の代議員による投票で決まる。代議員数は前回の376人から4人増えて380人となった。すでに九州を皮切りに、全国から、地域ブロック単位での推薦が相次いでおり、松本氏の再選が確実視されている。

 選対本部事務所開きには、松本氏の後ろ盾であり選対本部長を務める埼玉県医会長の金井忠男氏、30を超える都道府県医会長ら約200人が集まった。

 東京都医会長の尾﨑治夫氏は「これまでの守りの姿勢から、攻めの姿勢の日医に変えてもらいたい。1期目は前の期の延長という部分がある。2期目こそ松本さんの真価が問われる」と挨拶。静岡県医師会の加陽直実副会長は中部ブロックを代表し「いまこそ我われは財務省という強敵と戦える。医師会の3層構造(群市区・都道府県・日医)の指揮系統をしっかり締め直して戦うために、総司令官になれるのは松本さんしかいない」と期待感を示した。

「攻める医師会」「戦う医師会」といった声が相次いだことも踏まえたうえで、松本氏は「日医として攻めるところは攻める。しっかりと守るところは守るということを一体となってやりたい」と決意表明した。

 この日は、同時に松本氏の陣営が推す副会長・常任理事候補(キャビネット)も公表。副会長3人、常任理事14人は定数どおりの出馬のため、松本キャビネットのリストがそのまま次期副会長・常任理事のリストとなる。選挙で当落を決めるのは、会長ポストのみということだ。

 全国から支持する医師会幹部が集まった華々しい事務所開きとは対照的に、松原氏は組織的な支援とは無縁の戦いを強いられる。地元・大阪府医の幹部でさえ「大阪とは関係ない」「結果は見えているのになぜ手を挙げるのか」「何がしたいのか、よくわからない」と、そっぽを向く。