外食産業の供給過剰を招く
「パクリ文化」の深淵
では、なぜ日本はこのように供給過剰ともいうほど飲食店が爆発的に増えたのか。日本人の食への強いこだわりとか、日本食の奥深さなど、どうにかして日本人の高い精神性に話を持っていきたいところだが、産業構造的にいえば「パクり文化」によるところが大きい。
ラーメン屋でも居酒屋でも人気が出て繁盛すると、すぐに同業者がそれをパク……ではなく、インスパイアされたような、似たコンセプトの店を出す。そして別の同業者が再びそれをオマージュするという感じで、似たような店が大量にあふれていく。繁盛店と似ているのでそれなりに客も入る。こういうサイクルが繰り返されていった結果、気がつけば日本は「世界一の飲食店大国」になっていたというわけだ。
このサイクルを理解していただくには、「いきなり!ステーキ」が好調という時期を思い出していただくといいいだろう。同店がメディアで盛んに報じられてほどなくすると、「やっぱりステーキ」「カミナリステーキ」、さらには「あっ そうだステーキ」などというビミョーなネーミングの店が、続々と乱立したのである。
「プライドがないのか」と呆れる方も多いかもしれないが、このような「模倣の連鎖」こそが飲食業界を発展させてきた側面もある。わかりやすいのは、大手焼き鳥チェーン「鳥貴族」からロゴが似ていると訴えられた「鳥二郎」の主張だ。
《答弁書では「飲食業界は模倣を前提に成り立っている。競合店が互いに模倣し合って外食産業は発展してきた」とし、業界で“パクリ”は常識だと主張。鳥貴族の社長が以前に経済誌のインタビューで、行きつけの飲食店が均一価格だったことをヒントに価格を「280円均一」にしたと明かしていたとし、「社長も模倣が起業のきっかけになったと認めている」と指摘した。》(産経WEST 2015年6月16日)