だから、ステーキだ、タピオカだ、無人餃子販売だと、何か金儲けの匂いがする分野ができると、少しでもその恩恵に浴そうとみんながワッと押し寄せる。しかし、少ない消費者をたくさんのプレイヤーで奪い合うレッドオーシャンなのですぐに死屍累々となり、「閉店ラッシュ」が注目されるというわけだ。

 残念ながら、これは日本という市場の構造的な問題なので、「景気対策」や「減税」などでは解決ができない。日本のように成熟した社会でしかも人口が激減している国のバラマキは、将来への不安から貯蓄にまわされるだけなのだ。そこで、「人口減少」を前提とした経済システムを新たに考えていく必要がある。

なかなか受け入れられない
「シュリンコノミクス」と向き合うとき

 それが「シュリンコノミクス」と呼ばれるものだ。世界では日本を先進事例として、この新しい経済システムが構築できないのかと研究が進んでいる。欧州の先進国や中国なども、これから日本と同じ道を歩ことがわかっているからだ。2020年には国際通貨基金(IMF)が「Shrinkonomics: Lessons from Japan」(シュリンコノミクス:日本からの教訓)というレポートも出しており、筆者も21年の自民党総裁選のときには、『お気楽すぎる自民党総裁選、「シュリンコノミクス」の危機をなぜ争点にしないのか(https://diamond.jp/articles/-/282866)』という記事を書いているので、興味のある方はお読みいただきたい。

 いずれにせよ、人口減少が急速に進む中で我々がやるべきは表層的な議論ではない。「餃子の無人販売店が閉店ラッシュ」というニュースを受けて、「消費者の嗜好が変わった」とか「新たなマーケティングが必要では」という分析や議論をするのは楽しい。自分のビジネスの役に立つような気もするので、得した気分だ。

 しかし、これから自分たちの子どもや孫世代を待ち受ける未来の日本を踏まえれば、そういう目先の話はちょっと傍に置いて、「日本発のシュリンコノミクス」をつくっていくことを考えるべきではないか、と個人的には思う。

 人が減れば店も会社も減っていくのは当たり前だ。しかも、これまで人口増時代のビジネスモデルを引きずってあらゆるもののが過剰供給だったので、閉店ラッシュや倒産や廃業の増加も驚くようなことではなく、ごく自然の現象だ。

 まずは、日本人がなかなか受け入れられないこの現実と向き合うべきときがきているのではないか。

(ノンフィクションライター 窪田順生)

ステーキから焼き鳥まで…仁義なき「パクり文化」の外食産業が、閉店ラッシュに見舞われる当然の理由