日本銀行Photo:Tomohiro Ohsumi/gettyimages

「金利ある世界」で
利払費増のリスクは本当か

 財政制度等審議会(会長・十倉雅和住友化学会長、財政審)は5月21日、建議「我が国の財政運営の進むべき方向」(注1)を発表した。

 同建議は、「『金利のある世界』が既に現実のものとなっている」という認識を示した上で、財政健全化の必要性を強く訴えた。財政審によれば、「金利のある世界」で財政健全化が必要な理由の中核にあるのは、「利払費の増加リスク」だ。

 その論理は、以下のように要約されている。

「巨額の債務残高を抱える日本は、諸外国以上に金利上昇に伴う利払費の増加リスクを意識して節度ある財政運営に当たるべきである。仮に金利上昇による利払費の増加に伴い国債の増発を余儀なくされ、それが更なる金利の上昇を招くようなこととなれば、実体経済に著しい悪影響を及ぼし、国民生活を悪化させる。財政が経済の足を引っ張るような事態は避けなければならない」

 しかし、この論理はいくつもの深刻な誤りを犯している。

 その第一は、金利水準と財政運営をめぐる論理が一貫しないことだ。