「組織の中の人間が果たすべき貢献は、多様である。しかし、それらの貢献は、すべて共通の目標に向けられなければならない。あらゆる活動が同じ方向に向けられ、あらゆる貢献が隙間なく、摩擦なく、重複なく、大きな全体を作り上げなければならない。あらゆる仕事が組織全体の目標に向けられなければ、成果は得られない」(ドラッカー名著集(14)『マネジメント──課題、責任、実践』[中])
組織に働く者全員が、自らと自らの率いる部門が上位部門に対して果たすべき貢献、つまるところ、組織全体に対して果たすべき貢献について、責任を持たなければならない。
そのためには、自らと自らの率いる部門の目標は、自らが設定しなければならない。上司は、そのようにして設定された目標を承認する権限を持つ。しかし、目標の設定はあくまでも本人の責任であり、しかも最も重要な責任である。
それだけではない。全員が、自らと自らの部門が属する上位の部門の目標、ひいては組織全体の目標の設定に責任を持って参画しなければならない。
したがって、全員が、組織全体の究極の目標を知り、その内容を理解する必要がある。そして、自らと自らの率いる部門に求められているものと、その理由を知る必要がある。当然、自らと自らの率いる部門の成果は、何によって、いかに評価すべきかを知る必要がある。
目標管理とは、目標を与えて管理することではない。正しくは、自己目標管理である。まさに、自己目標管理の利点は、自らの活動を自ら管理することにある。その結果、最善を尽くすための動機がもたらされる。
ここにおいてドラッカーは「自己目標管理は、マネジメント全体の方向づけや仕事の一体性のためには不要としても、自己管理のためには不可欠である」という。
自己目標管理とは、全員のビジョンを方向づけ、個の強みと責任を全開させるためのものである。
だが、真の自己管理を伴う自己目標管理を実現しているところはまだ多くはない。
「哲学という言葉を安易に使いたくはない。できれば、まったく使いたくない。大げさである。しかし、自己目標管理こそマネジメントの哲学たるべきものである」(『マネジメント』)