インテリアも精悍だ。黒を基調にレッドのアクセントを配し、専用シートを装備するなどNISMOらしくアレンジしている。標準仕様のアリアは“ラウンジ”といったイメージだが、NISMOは“コクピット”と呼ぶにふさわしい機能的な印象だ。

刺激的で痛快なスピードの伸び
意のままのハンドリングも大きな美点

 ラインアップは、91kWバッテリーを積むB9(944万1300円)と、同66kWhバッテリーのB6(842万9300円)の2種。駆動方式はともに電動4輪駆動のe-4ORCEになる。試乗車はB9である。

 走りは力強い。アリアの持ち味である、静かで滑らかなキャラクターに加えて、最高出力を320kWまで引き上げるとともに、各種制御をNISMO専用にチューニングしたことで、よりパワフルな加速を手に入れている。Dレンジでe-Pedalを使わない場合の減速力を少し強め、運転のメリハリ感を演出した点もNISMOの個性だ。

 走行モードをNISMOにセットしてアクセルON。俊敏で伸びやかなスピードの伸びに正直、驚いた。アクセルレスポンスが最大化され、リアルスポーツに匹敵するパフォーマンスを披露する。しかもBOSEプレミアムサウンドシステム装着車(op13万2000円)なら、フォーミュラEマシンのようなEVサウンドの演出を楽しむこともできる。このサウンドは一聴の価値がある。

 NISMOはシャシーも素晴らしい。空力と合わせて専用調律が施されており、走りは一変している。ひと言でいうと、洗練された上質な乗り味になっていた。NISMOと聞くと、スポーティでスパルタンな乗り味を想起するが、車種によってはベース車よりも乗り心地が快適になっているケースがある。アリアNISMOは後者に該当する。

 手の加えられた内容は多岐にわたる。スプリングやダンパー、スタビライザーにとどまらず、キャンバー剛性を高めるためにストラット外筒板厚を上げたほか、専用開発タイヤに軽量化と空力に寄与するワイドホイールを組み合わせ、これらに合わせてパワーステアリングやブレーキ、VDCの特性の最適化を図ったという。

 電動駆動4輪制御技術e-4ORCEについても、駆動力配分をベース車比でリア寄りとしてトラクションと旋回加速性能を高めるよう専用セッティングが施された。これらが実現した走りは、なかなかの味わいだ。上質さとともに意のままに気持ちよく操れる運動性能を実現している。ステアリングにはしっかりとした手応えがあり、しなやかに路面を捉えながら、コーナリングではイメージどおり正確にラインをトレースする。スタビリティが高く、ロール感が自然で挙動が掴みやすい。アクセルを踏み込むとリアから押し出される感覚が基準車よりも強まっていた。