さらに、「仕切り直す」もある。何かがうまく調整できなかった時、「仕切り直して、開催は来年にしないか」などと言う。相撲では、土俵上で両力士の呼吸が合わない時、いったん仕切ることをやめて立ち上がる。そして再び仕切る。ここから来ている。

 さらに、「合宿の厳しさは聞いていたけど、初日から地獄だよ。だけど、初日の地獄なんて序ノ口だった」などの「序ノ口」。一般には「始まったばかり」という意味で使うが、これは番付の最下位「序ノ口」から来ている。相撲人生が始まったばかりの地位である。

書影『大相撲の不思議3』(潮新書)『大相撲の不思議3』(潮新書)
内館牧子 著

 また「大先輩と仕事ができるチャンスをいただきました。胸を借りて、自分も必ず成長します」など「胸を借りる」も相撲から来ている。自分より上位の、あるいは強豪の力士に稽古をつけてもらうことだ。一般社会でも謙遜を含めてよく使われる。

 変わったところでは、「土左衛門」がある。これは「水死体」を示す言葉だが、なぜ相撲が語源なのか。江戸相撲に成瀬川土左衛門という力士がいて、太ったアンコ型(編集部注/お腹が丸い体型をした力士を指す相撲用語)で色が白かったそうだ。その姿が、膨れあがった水死体に似ているところから来ているとされる。

 そういえば一般社会で、メタボの人を「アンコ」と言うのもよく聞く。