一般社会でも「勢い余ってやりすぎて失敗すること」を言う。「彼女、まんざらでもないって顔したからプロポーズしたんだけど……勇み足だったな」などと使われ、相撲の技と重なる。

 非技としては、「腰砕け」もある。これは名古屋場所13日目、横綱白鵬と大関豪栄道の一番で出た。立ち合いと同時に白鵬が張ろうとした直前、豪栄道の腰が砕けて倒れてしまった。白鵬が何もやっていないのにだ。バランスを崩したのか、絵に描いたような「腰砕け」だった。

 そして、私たちは「肩すかし」もよく使う。例えば「もっと豪華な昼食会だと思って、スーツにネクタイで行ったら、どってことないランチだよ。とんだ肩すかし食ったよ」などと言う。これは相撲の決まり手のひとつで、立ち合いと同時に前に出て行くように見せかけ、体を横に開いて相手の肩をはたき、引き倒す。相手は出てくると思っていたのに、「とんだ肩すかし」だったわけだ。

 また、「いなす」もある。突進してくる相手に対して体を開いて避け、そらす技だ。これも相撲界独特の言葉だが、今や一般社会でも「適当にあしらう」という意味で当たり前に使われる。

「理屈に合わない追求がしつこいんだよ。ま、うまくいなしといたけど」などと言い、出てくる相手をうまくそらすという意味で相撲の語源に重なっている。

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「脇が甘い」もよく使われる。相撲では脇を固く締めていない状態を言う。脇がユルユルなので、相手が脇の下に手を入れやすく、攻められやすい。

 一般社会では「油断がある」という意味で使われることが多いが、印象的だったのは、何年か前に某政治家の女性スキャンダルが騒がれた時のことだ。妻はあわてず騒がず、一言「脇が甘いのよ」。みごとな正妻の弁だった。

 また、「受けに回る」も一般的によく聞くだろう。何か重要な場に臨んだ人が、「十分に準備をしたし、うまくいくはずだった。でも、いざその場に立つと受けに回ってしまいました」などと言う。相撲では、「受け身になってしまい、攻めに欠ける状態」を言うので、まさに重なる。