「愛子天皇」という蜃気楼を
見せて議論を遅らせる人たち

 なお、前述の週刊誌「女性自身」の記事で与野党間の合意の遅れを批判している神道学者は、別のメディアにおいて、皇室継承問題をこじらせているのは、「天皇陛下から秋篠宮殿下、さらに悠仁親王殿下へという今の皇位継承順序が“変更されない”範囲内で、事態の打開策を探ろうとしているからだ」と発言。まるで「愛子天皇」を実現すべきだと言いたいようだ。

 しかし、野田氏ら立憲民主党関係者も、悠仁さまの継承は否定していない。すでに書いたように、生前退位のための法律で、わざわざ秋篠宮殿下を皇嗣殿下として皇太子と同様にすると決め、立皇嗣礼までしたのである。

 にもかかわらず、一部の専門家と称する人たちは、皇太子は空席だとかデマを流したり、あたかも国会で議論されているのが、愛子天皇の是非だと印象操作をして、一般国民に「蜃気楼(しんきろう)」を見せてあおり、議論の進展を遅らせている。

 付け加えると、ヨーロッパにおいて女王や女系継承が拡大しているのは事実だが、すでに生まれている王族の順位は変えないのが常識だ。したがって、日本においても、女系を認めたとしても、悠仁さまより後の話でないと、国際的にも非常識だ。

 悠仁さまより愛子さまのほうが天皇にふさわしいという人もいる。だが、悠仁さまの資質については、学業、健康、帝王学としての経験などにおいて、何の問題も生じていない。大学進学後は、在学中にでも早く留学をされたり、両親だけでなく上皇陛下や天皇陛下から直接に薫陶を受けられたりすることだろう。

 一方、愛子さまは、大学もわずかしか通学されていなかった。「成年の儀」も遅れた上、一連の行事を未達成のまま終わった。20歳前からするべき本格的な単独公務をまだ開始されていない。というように、これまでの皇族の常識にとらわれず自由に個性を発揮されている。

 両陛下には、時間に制約されずに物事に取り組むという愛子さまの長所を伸ばしたいというお考えなのだろうが、将来の天皇となる可能性を少しでも念頭に置いておられるならありえないだろう。天皇というのは、何ごとも好き嫌いなく、決められたときに決められたことを要求される仕事だからだ。

(評論家 八幡和郎)