すなわち、経常収支が黒字のときは
経常収支=純資本流出(=海外純投資)
経常収支が赤字のときは
経常収支=純資本流入
したがって、貯蓄は国内の投資になるか、海外への純投資(純資本流出)になる。すなわち、
貯蓄=投資+経常収支(=純資本流出)
である。
つまり、国内貯蓄を国内投資で使いきれなかったら経常収支の黒字になり、それは純資本流出になっているということである。
以上はGDP統計の定義式から導かれる恒等式で絶対に正しいが、これを因果関係と解釈することもできる。
海外への純投資が
大きいから円安になる
下の式は、輸出が大きいから純資本流出が大きいとも、貯蓄が大きいから経常収支が大きいとも読める。
貯蓄=投資+経常収支(=輸出等-輸入等=純資本流出)
しかし、ここでは、国内貯蓄を国内投資で使いきれなかったら純資本流出、すなわち海外純投資になるが、そのためには経常収支が黒字にならないといけないと読む。
では、どうやって経常収支黒字を作り出すかと言えば、円安である。円安によって輸出等(インバウンドなどのサービス輸出、日本の投資の海外からの支払いを含む)が増え、輸入が減って経常収支黒字になる。
純輸出=純資本流出は、輸出が輸入より多いから海外投資をしているとも、純資本流出が大きいから輸出が輸入より大きくなるとも解釈できる。
後者であれば、国内のリターンに比べて海外のリターンが高いので、海外に投資するために純輸出(経常収支)の黒字が大きくならなければならない。だから、純輸出を大きくするために円安になるということである。
これは「経常収支がプラスであることは、日本経済が強力である証拠」という一般の考え方とはかなり異なる。国内の投資機会が豊富で海外からの投資をひきつける国のほうが、経済は強力と考えるということである。
日本は国内経済が弱いので海外に投資し、海外でのリターンを求めたほうが良い。海外に投資するためには純輸出がプラスにならなければならないので為替レートが低下すると考える訳だ。
つまり、国内の投資リターンが低く、海外のリターンが高いことが円安の要因である。であれば、日本の金利を上げてリターンを上げれば、円安は収まると考えるかもしれない。しかしここで、日本のリターンと海外のリターンとは何かを考えなければならない。