ときには、言い合いになるくらいの激アツな反省会は、やはり音漏れのしないカラオケボックスが一番かもしれない。

いくら嫌われても衝突したら失格
できる公安捜査官は「ひとたらし」

 事件が起きれば捜査をし、犯人を特定して捕まえるのが刑事のスタイルであるのに対して、公安はスパイやテロリストを監視して実行させないようにするのが仕事である。

 刑事や警察官は公安捜査官に対して、「俺たちが毎日、多くの事件や捜査でてんてこ舞いしているのに、公安の奴らは、監視に行きます、と言いながら、喫茶店やパチンコ店で時間をつぶしているんじゃないか」「監視と称して、外で何やってるんだ、あいつら」と思っている。

 公安からすれば、「テロリストや過激派に何も起こさせないで、今、平和なのは俺たちの努力の成果なんだ」と思っている。

 スタイルがそもそも違うので、どうしても折り合わず、良くも悪くもお互いのプライドがぶつかってしまうのだ。

 ちなみに私が警察署の公安捜査官の頃は、当直があり、刑事課の警察官たちと一緒に泊まり勤務に就くことがあった。

 なかには公安である私に対して口をきかなかったり、嫌味を言ってくる人間もいた。

 でもそれに応戦してしまったら、公安としては失格だ。

「いやぁ、刑事課も大変ですね。頭が下がるよ」

 と労いの言葉をかけるようにしていた。

 身近な存在、身内の刑事こそ味方につけるのが、できる公安である。要するに1人でも多くから情報収集するには、“ひとたらし”になって、意地の悪い刑事でも味方にすることが大切になる。

 私の場合は、英語ができるので、外国人の参考人や被害者の英語の調書作成、外国人被疑者の取り調べの通訳を買って出ていた。困っていた刑事は大変感謝する。

 このように先に奉仕してあげると、相手は恩を感じてこちらの欲しい情報を教えてくれるようになる。

 逆もしかりで、仕事ができる刑事は公安を味方につける。偏狭な考えではなく、少しでも仲良くして、たらし込まないとダメ。

 何かあった時に味方になってくれたり、情報をもらったり、教えてもらったり、いい意味で、自分の味方として取り込んでおくのだ。

 そのような関係性を作っておくと、相手の刑事からも、

「いや、公安も人に言えない気苦労があって大変だろう」

 と返ってくる。

 公安は身内こそ敵に回さず、味方にしなければならない。無意識レベルでこれができるようになると、一人前の公安捜査官と言える。