「ドラゴンボール」が世界中で愛された“意外な”理由【マンガが変えたフランス人の日本観】フランスのスーパーマーケットにある「マンガ」コーナー Photo by Kazuyuki Yamaguchi

マンガやアニメ、日本食を通して日本文化がフランスで熱烈な人気を集めている。そして、現在の日本ブームに一役買っているのが、次期フランス大統領候補の一人だというから驚きだ。アニメやマンガのおかげでフランス人が日本人を見る目も随分と変わってきたという。ツール・ド・フランス取材歴30年のジャーナリストが自身が体験したフランス人の変化を綴る。(取材・文/スポーツジャーナリスト  山口和幸)

【目次】
・優勝の鍵を握るピレネー山脈
・次期大統領候補は親日派 日本との連携強化に
・道を尋ねたときにわかる「フランス人のマンガ好き」
・故鳥山明先生のドラゴンボールが世界中で愛された理由
・1980年代、ツール・ド・フランスに日本企業が多数協賛していた時代

優勝の鍵を握るピレネー山脈
総合優勝争いでポガチャルがリード

 総距離3500kmを自転車で走るツール・ド・フランスはいよいよ難関が連続する後半戦に突入。ピレネー、アルプスという勝負どころの山岳ステージが待ち構え、コートダジュールのニースを目指す。

 残り少ない平坦コースの第13ステージは、アルペシン・ドゥクーニンクのヤスパー・フィリプセン(ベルギー)が大集団によるゴールスプリント勝負を制し、第8ステージに続く今大会2勝目、大会通算8勝目を挙げた。首位のマイヨジョーヌはUAEチームエミレーツのタデイ・ポガチャル(スロベニア)が堅持。

 第14ステージは28.5km地点からオクシタニー地域圏に突入し、雌雄を決するピレネー山脈での緒戦となり、ここでもポガチャルが総合優勝を争うライバルたちに差をつけて独走勝利。3年ぶり3度目の総合優勝に前進した。

スポーツと文化の融合地
オクシタニーの戦略的魅力

 フランスの地方行政区画で一番大きなものはレジョン(地域圏)と呼ばれる。欧州にあるものは地中海に囲まれたコルシカ島を含めて13、海外フランス領に5つある。

 オクシタニー地域圏はかつてラングドックルシヨンとかミディピレネーと呼ばれた地域が2016年に統合されて誕生した。その最大都市は、航空産業が盛んでエアバス本社もあるトゥールーズ。

 フランス側のピレネー山脈もほぼこの地域圏内で、2024年のツール・ド・フランスでは第15、16ステージもこのエリアだ。毎年のことながら3〜4ステージはオクシタニー地域圏を走っている。

 フランスのスポーツ国際イベントが日本に向けてなにかを発信する際に必ず顔を出すのがこのオクシタニーだ。2022年のフィギュアスケート世界選手権はモンペリエ開催。2023ラグビーワールドカップはグループリーグで日本戦4試合のうち2試合をトゥールーズで開催した。

「観光はもちろん、経済、文化、教育・研究において日本と連携するのは意義があり、それを具現化していくためにスポーツというアイテムを有効に駆使していこう」という戦略があるのだ。

 なぜオクシタニーがスポーツに着目しているのか? それはこの地域がスポーツ界で高いレベルにあるからだ。それではなぜ日本なのか? そこには、日本の文化と日本人の価値観に心酔し、日本に傾倒している1人の女性が存在するからだ。