Photo by Tomoko Tsumoto
「赤字がだいぶ解消されるかもしれない」──。
復興需要が盛り上がりを見せる一方、労務費や資材費の高騰に泣いていたゼネコン業界が大喜びする施策が登場した。国土交通省、農林水産省の両省が4月から公共工事の労務単価を引き上げることを決めたのだ。
前年度比で平均15%もの大幅アップは前代未聞で、新年度からはこの新単価で公共工事の金額がはじき出される。ただ、ゼネコンが歓声を上げる一方、末端の労働者の賃上げにまで結び付くかどうか、懸念の声も出ている。
というのも、建設業界は孫請けどころか5次、6次請けまで存在する重層構造になっている。末端にいくほど立場が弱く、格安の賃金に加え、社会保険未加入者も数多い。せっかく単価を引き上げても、この構造では、中間の誰かがピンハネしないとも限らない。
実際に昨年、元請けのゼネコンが労務費上昇によるコストアップで利益を削っていたにもかかわらず、労働者の賃金がさほど上がっておらず、ピンハネが問題化していた。
国交省もその点を危惧しており、単価引き上げと併せて、日本建設業連合会など業界団体に適切な賃金水準を確保するよう通知書を出したほどだ。
それだけではない。実際に賃金が上がっているかどうか、今年秋をめどに実態調査をして検証、相変わらず無保険で働かせている業者への指導も厳しくする方針だ。役所の“強権発動”といえばろくなことがないというのが相場だが、今回限りは建設労働者から強い“支持”を集めそうな施策。アベノミクスの賃上げがここにも及んでいる。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 津本朋子)