「5300年前の冷凍ミイラ」が腰痛改善のツボ治療?東洋医学の歴史を覆すかもしれない大発見とは写真はイメージです Photo:PIXTA

鍼灸治療の根本であるツボの実態は、いまだ科学的に解明されていない。しかし近年、さまざまな研究によって少しずつ解き明かされてきている。そもそも、ツボとは何か。そして、なぜ「その場所」にあるのか。身近で謎多きツボの正体を追う。本稿は、山本高穂、大野 智『東洋医学はなぜ効くのか ツボ・鍼灸・漢方薬、西洋医学で見る驚きのメカニズム』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。

鍼灸や東洋医学の起源を
覆す可能性がある大発見

 鍼灸が人体に作用するさまざまなメカニズムについて、皆さんがずっと疑問に思っていることに触れてみたいと思います。そもそも、ツボとは何なのでしょうか、なぜ、「その場所」にあるのでしょうか。

 実は、鍼灸治療の根本であるツボの実態は、中国の古典で示されて以来、いまだ科学的には解明されていません。しかし近年、さまざまな研究によってツボの生理学的・解剖学的な特徴が少しずつ解き明かされてきています。ここからは、ツボの正体に関する新たな考え方や最新研究を見ていきます。

 まず、鍼灸や東洋医学の起源・歴史をも覆す可能性がある発見をご紹介しましょう。2023年10月、筆者(編集部注/山本高穂)が番組取材で訪ねたのは、イタリア北部、アルプスの麓に位置する街・ボルツァーノ。目的は、地元の博物館に保管されている世界最古の冷凍ミイラ「アイスマン」です。

 1991年、イタリアとオーストリアの国境の標高約3200メートルの氷河で氷漬けになっていたところを偶然発見され、世界的な大ニュースとなりました。調査の結果、5300年前に暮らしていた50歳ほどと見られる男性と判明。熊の毛皮を縫い合わせた帽子や、山羊などの皮でできた上着やズボン、弓矢や斧などの狩猟用具も見つかったことから考古学史上希にみる発見とされています。

冷凍ミイラの入れ墨は
ツボを示している?

 実は、このアイスマンの調査で最も謎とされたのが、体の各所に見つかった入れ墨です。ひとつの大きさは約5センチメートルで、×印や2~4本の線が描かれているものなど、極めてシンプルな形をしていますが、何のためだったのでしょうか。調査にあたった古病理学者のアルベルト・ツィンク博士によると、当初、研究チームでは、「部族の証」や「成人の証」など、さまざまな推測がなされましたが、決定的な結論には至らなかったと言います。