また、肩こりや腰痛などの症状が重くなると患部の周りのツボを押したときの痛みも強くなる、という経験がある方も少なくないでしょう。

 このような痛みは、一般的には筋肉がこる=硬くなることから生じます。筋肉の動きが低下したり、逆に過剰な繰り返しの動作が続いたりすると筋肉が緊張してこわばり、血流が低下します。すると、老廃物が蓄積したり、炎症が生じたりするなどして筋肉の組織の一部が変性し、過敏なポイントである圧痛点が現れることがわかっています。

 そして、この圧痛点ですが、線維筋痛症などの治療で使われるトリガーポイント=「痛みの引き金となる点」とも共通点が多いとされています。アメリカのある調査では、慢性痛を持つ患者のおよそ8割にトリガーポイントが存在すると報告されています。

 話を戻しますが、実はこの圧痛点が生じやすい場所が、東洋医学のツボの位置と類似していることについて、多くの研究で指摘されています。

 例えば、変形性膝関節症の患者では、ひざの関節が動きにくくなることから、脚の筋肉に負担がかかり、圧痛点が生じます。圧痛点の位置とツボの位置を比較してみると、圧痛点はツボの周りに多くあることがわかります。このような事実から、一定数のツボは、体の姿勢や動作の負担がかかりやすい場所にあると考えられているのです。アイスマンのケースでも、ひざなどを悪くしたことで腰に負担がかかり、結果的に腰痛を患っていたという分析がありました。

 つまり、人間の体の構造上、腰や肩、ひざなど、物理的な負担が局所にかかりやすいポイントが一定数存在し、そこが圧痛点=ツボなのではないか、という捉え方が見えてきます。もちろん、すべてのツボを説明することはできませんが、身体的な痛みに関係するツボの多くは、この考え方が当てはまります。体の動きや姿勢など、運動力学的な視点からツボの意味を見出すことができるのです。