その結果、19回の実験のうち15回で、蛍光色素は内関からひじの内側にあるツボである曲沢方向へと、実線や破線のような軌跡を伴い移動することが確認されました。被験者によっては、約10分で蛍光の線がはっきりと確認でき、1時間後に蛍光の強さがピークに達しました。

 一方、内関に隣接する場所に同じように蛍光色素を注入しても、顕著な現象は見られませんでした。

 半信半疑の読者もいらっしゃるかもしれません。ただ、このような経絡の謎に挑む実験や検証は、過去にも動物や人を対象にして幾度か行われており、結果にはばらつきがあるものの同様の現象が確認されています。

 しかし、この経絡のラインを示す蛍光色素の移動は、皮膚下でどのような器官や組織を介しているのでしょうか。今回の実験では、超音波診断装置を使って色素の移動ルートが調べられており、その結果から、動脈や静脈などではなく、ファシアとの関連が指摘されています。

 なかでも、研究チームが推測するのは、経絡はファシアの中を流れる間質液の通り道である、という仮説です。間質とは、細胞と細胞の間にある隙間を指します。間質液とは、その隙間にある血液やリンパ液以外の体液のことで、ファシアでは網目状のコラーゲン組織の中を流れているとされています。

 実は、この間質液についてはファシアと同じく、近年ようやく詳しい解明が始まったばかりで、まだまだ未知の機能や役割を担っている可能性があります。近い将来、こうした体の機能が明らかになるとともに、経絡の謎も解き明かされるかもしれません。