もっと簡単に説明すると、それぞれのライン=線路は、筋膜や腱でつながっていて、筋肉は駅のような存在と考えます。つまり、それぞれの駅(筋肉)は独立していますが、線路(筋膜など)でつながっているので、ひとつの駅で問題があれば、その影響は全体に及ぶというわけです。

 実は、この筋膜経線の多くが、鍼灸の経絡と相似しています。例えば、体の裏側にあり、足元から背中、頭までに至る経絡である足の太陽膀胱経は、筋膜経線のSBL:SuperficialBackLineと同じようなルートなのです。

 さらに、少しややこしいのですが、実は、鍼灸には経絡によく似た経筋という理論も存在します。これは、マイヤース氏の「アナトミー・トレイン」と同じように、筋肉のつながりを示す概念で、経絡のうち12本の経脈のライン上にある筋肉がつながっているというものです。

 このように「経絡・経筋」と「筋膜経線」は、実にふしぎな類似性なのですが、洋の東西を問わず、体の痛みや治療に「筋膜(筋肉)のつながり」が見出された可能性もあると筆者(編集部注/山本高穂)は考えています。

「経絡」が見えた?
さらに進む科学的解明

 経絡の存在について、実験的な手法での探索も進んでいます。2021年に発表された中国の研究では、健常者のボランティアの協力を得て、手首にある内関のツボを使って実験が行われました。ツボの表面から2~3ミリメートル下にある真皮層に注射器で蛍光色素を注入し、色素の移動ルートや時間を詳しく観察したのです。