「自力整体」とは、整体プロの技法を自分におこなう人気メソッドです。現在1万5000人が実践中。「久しぶりにぐっすり眠れた!」「10年間苦しんできた慢性痛から解放された!」「健康的にダイエットできた!」と絶賛の声が続々。「3分以内でできる悩み解決ワーク」を集めた著書『すぐできる自力整体』も好評。著者の矢上真理恵さんは、「不調のほとんどは自力整体で解消できる」と語ります。今回は、自力整体の考案者であり、50年近く鍼灸師・整体治療家・ヨガ講師としても活動されてきた矢上裕さん(矢上真理恵さんのお父様)をお迎えし、東洋医学の視点から、原因がよくわからない痛み・不調解消のヒントをお届けします。
監修:矢上 裕 矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家
(写真/榊智朗 構成/依田則子)

【整体プロが指南】原因がよくわからない痛みや不調、自分で解決できる? ラクになる「4つの流れ」

「痛み難民」は約2000万人

――自力整体考案者であり50年近い鍼灸師・整体治療家のキャリアをおもちの矢上裕先生から、原因がよくわからない痛みや不調に悩まされている方々へ、解決のヒントをお話しいただけますか。

矢上裕:現在、原因不明の慢性痛を抱え、整形外科をはじめ民間治療を渡り歩いている人々が約2000万人存在すると言われています。

その方たちは「痛み難民」と呼ばれ、今この瞬間も「少しでも私の痛みを癒してくれる治療家」を求めて、多くの時間とお金を使って通っておられます。

現在、全国には約21万件の治療院があると推測されています。コンビニの数が5万件と言いますから、コンビニの4倍の治療院があり、そして経営が成り立っていることを考えると、2000万の「痛み難民」が、20万件の治療院に通っているということですね。

しかし患者さんの中には、治療を受けたくても、時間や経済面など、様々な事情で通うことが難しい方もいるでしょう。治療法がわからず、あきらめて痛みを我慢している方もいるでしょう。胸が締めつけられます。
そんな「痛み難民」の方々のすべてに、自力整体を学んでほしいと切に願います。

では、「なぜ自力整体で痛みが癒えるのか」をお伝えしておきましょう。

加齢や虚弱で「気」の勢いがなくなると痛みは出やすい

矢上裕:東洋医学では、痛みの原因は「『気』が少なくなり、エネルギーを失い、経絡(けいらく)上で渋滞するから」と考えます。
私はこの理論をベースに自力整体を組み立てています。

体にゆがんでいる部分があると、「経絡」という「気」(生命を活性化するエネルギーのようなもの)が流れるパイプが押しつぶされ、痛みが発生します

若くて気の量が多い時は、多少のゆがみがあっても気の勢いで渋滞を吹き飛ばすので、痛みは出ませんが、加齢や虚弱とともに、気の勢いがなくなり、渋滞して痛みを発しやすくなります

自力整体は徹底的に、渋滞しやすい「手首」を刺激

渋滞しやすいのは関節です。ですから、自力整体では、渋滞しやすい関節に刺激を与えながら、ゆさぶって渋滞を解放させようとしています。

よく経絡治療では、ツボに鍼(はり)を打って気を注入します。そのツボの場所の多くは、手首の関節に集中しています。

ですから、自力整体では徹底的に手首を刺激して、気を注入させます(※ワークは後半で紹介)。「手首こそが気の取り入れ口」なのです。

経絡をほぐして、大量の「気」を取り込む

私たちの体には、経絡上に目に見えない361のツボがあります。自力整体は、このツボを開くという作業もしています。大気中に存在する気を取り入れるためです。

ですから、自力整体が終わるころは、ツボから大量の気を取り入れ、呼吸から取り入れる気と合わせて大量の気で満たされるとともに、圧迫された経絡が解放され、そこを大量の気が流れ込んでいくわけです。
要するに肺呼吸とツボ呼吸の両方から、気を取り込める体に仕上げていくのですね。

そして自力整体の授業では、最初と最後に「30秒呼吸法」(腹式呼吸)をやり、自力整体で姿勢が改善されたか、呼吸が深くなったか、を確認して、授業を終了しています。

「気をすり減らさない」食生活

そして当然、「気をすり減らさない」ために、胃の過労を避ける食生活指導がなされます。
これを「整食法(せいしょくほう)」といいます。やり方は簡単です。寝る3時間前に夕食を終わらせ、朝は固形物を控えお粥やスープなどにして内臓を休めます(これはひどい痛み・体調不良の方へすすめています)。

さらに気をすり減らさないための心の持ち方(マインドフルネス)の指導もおこないますので、自力整体の正式名称は、自力整体・整心・整食法なのです。

痛み・不調を癒す「4つの流れ」

痛み・不調を癒すには、「4つの流れ」があります。
次の私の90分授業は、その流れにそったものです。

◎痛み・不調を癒す「4つの流れ」
1.「30秒呼吸法」(10秒吸って10秒止めて10秒吐く腹式呼吸を数回)
2.「手首刺激」~気の取り入れ口を整備する
3.「各経絡ほぐし」~気の通り道の整備
4.「30秒呼吸法」(1と同様)

これが自力整体の正式な90分授業の流れです。

――この「4つの流れ」は、自宅でもできますか?

矢上裕:この「4つの流れ」は、痛みや不調を和らげるために考えられたもので、順番には意味があります。書籍を見ながら自宅でおこなう際は、この流れを参考におこなってみてください。本では、この流れのショートバージョンを体験できます。

もしやり方がいまいちわからない方は、全国に500名の自力整体ナビゲーターがおりますので、一度、授業に参加されるとよいでしょう。

――最後に矢上真理恵さんの書籍『すぐできる自力整体』の中から、「2、気の取り入れ口を整備する『手首刺激』」に該当するワークをご紹介ください。

矢上真理恵:本の動画レッスンでも紹介している「手首のほぐし」のワークを紹介しましょう。
手首を通る経絡のうち「心包経(しんぽうけい)」「心経(しんけい)」「肺経(はいけい)」を刺激して、痛み・不調を和らげるのに役立ちます。

【整体プロが指南】原因がよくわからない痛みや不調、自分で解決できる? ラクになる「4つの流れ」 矢上 真理恵(やがみ・まりえ)写真左
矢上予防医学研究所ディレクター
1984年、兵庫県生まれ。高校卒業後単身渡米、芸術大学プラット・インスティテュートで衣装デザインを学び、ニューヨークにて独立。成功を夢見みて、徹夜は当たり前、寝るのはソファの上といった多忙な生活を続けた結果、心身のバランスをくずし動けなくなる。そのとき、父・矢上裕が考案し約1万5000名が実践している「自力整体」を本格的に学び、心身の健康を取り戻し、その魅力を再発見。その後、自力整体ナビゲーターとして、カナダ、ヨーロッパ各地、イスラエルにて、クラスとワークショップを開催。さらに英国の名門セントラル・セント・マーチンズ大学院で「身体」をより体系的に学び、2019年に帰国。現在、国内外の人たちに自力整体を伝えながら、女性のための予防医学をライフワークにしている。著書に、『すごい自力整体』(ダイヤモンド社)がある。

監修者:矢上 裕(やがみ・ゆう)写真右
矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家
1953年、鹿児島県生まれ。関西学院大学在学中の2年生のとき、予防医学の重要性に目覚め、東洋医学を学ぶため大学を中退。鍼灸師・整体治療家として活躍するかたわら、効果の高い施術を自分でできるように研究・改良を重ね「自力整体」を完成。兵庫県西宮市で教室を開講、書籍の出版やメディア出演などで注目され、全国から不調を抱える人々が続々と訪れるようになる。現在約500名の指導者のもと、約1万5000名が学んでいる。著書に『自力整体の真髄』『はじめての自力整体』(ともに新星出版社)など多数。遠隔地の人のために、オンライン授業と通信教育もおこなう。 写真/榊智朗