加えて、日本には治安の良さ、人の優しさ、街の清潔感など、日本では当たり前だが、諸外国ではあり得ない社会的な安心感がある。それは、外国人留学生には魅力的な面もあるだろう。そうした日本の長所を生かして、日本で働く外国人を増やすことは可能だと考える。国に対する信用の端緒として、東京都文京区の有名公立小学校に中国人生徒が増えていることは、先日ニュースとして大きく報道された。こうした子どもたちも、日本の担い手として育つ可能性が高い。

日本の少子化を補う外国人留学生
戦略的な活用を考えるべき

 そこで、少子化対策の提案をしたい。日本国民については「産む気がある人」を国を挙げて支援すべきだが、若い世代に単なる出産奨励を行う必要はない。一方で外国人については、単純労働ではなく高度な労働の担い手となる留学生を積極的に支援したい。「高度な」とは、総合職として年収が上がっていくことを指す。その際、大学時代に日本の文化・生活習慣を学び、実践し、身に着けてもらいたい。日本人ではないものの、日本の精神文化を大切にしてもらいたいのだ。

 また、卒業後に日本で一定期間以上働き続けることにインセンティブを設け、優秀な労働力として取り込んでいく。私は、日本で働く優秀な中国人やベトナム人を少なからず知っている。彼らの経済的なメリットは、生産性の高さだけでなく、育成期間のコストにある。日本人なら生まれてから一人前の労働力に育てるまでに22年ほどかかる期間を、外国人ではわずか4年(大学院を入れても6年)に短縮することができる。これは、日本人が18歳の子どもを産んでいるのと同じことを意味する。2023年の日本の出生人口は72万7277人なので、30万人の留学生を足すと100万人に達することになる。

 日本は世界で見ても、外国人の受け入れ数が上位の国となっている。ちなみに、経済協力開発機構(OECD)は統計上、「国内に1年以上滞在する外国人」を移民と定義しているので、ほとんどの在留資格者はこの定義上は移民に相当するが、日本では移民とは呼んでいない。しかし、この「実質的な移民」を少子化対策、労働力確保、経済成長をバランスよく実現する手段と捉えてもいいのではないだろうか。それが、国としての戦略性というものである。

(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖有人)