1社につき年間で10回前後
会社経営陣と面談

 もちろん提案と言っても、無理難題を押しつけるわけではありません。そもそも事業内容について口出しすること自体、実はあまりないのです。餅は餅屋で、外部の我々は事業の素人に過ぎない場合が多いと自覚しているからです。

 一方で注目するのは、ガバナンスのあり方や財務状況。我々が以前投資したJDLのように現金を貯め込んでいたり、余計な資産を持っていたり、取締役会が機能していなかったりしたら、それはなぜなのかを尋ね、どうすれば改善されるかを考えて提案するわけです。いずれも、株主として当たり前の主張をしているに過ぎません。

 これは、主権者の立場で考えてみればわかりやすいでしょう。国や自治体がムダ遣いをしていたり、必要なところに使わずに貯め込んでいたりしたら、私たちは納税者・有権者として改善を求めるはずです。まして株主は株式会社の有権者であるとともにオーナーでもあり、投資元本が毀損するリスクを冒して投資しています。そのお金がどう使われているか、きちんとリターンを得られるのか、経営を注視するのは当然のことです。

 自らは直接に運用しない投資家(アセット・オーナー)から運用を付託されている我々は、言い換えるなら我々の顧客である投資家に対して受託者責任を負っているわけです。リターンを生むために投資先を選択し、直接会って働きかけることこそ、最大の役割です。

 それには当然、ある程度の時間がかかります。「目先の利益ばかり追いかけて売り抜ける」という一般的なイメージとは裏腹に、だいたい3~5年は株を保有し続けるのが従来のパターンです。

 その間の基本的なアプローチは、投資先企業による四半期ごとの決算説明を聞くこと。その場で、説明をお聞きするだけではなく、株主の立場から質問したり、こうしてほしい、ああしてはどうかということをお伝えしたりします。あるいは決算説明の機会にかぎらず、お話ししたいことがあれば随時先方に面談を依頼します。その内容によって、会長や社長など代表権のある方の他、IR担当の取締役や社外取締役、監査役などとの面談を求めることもあります。トータルすると、1社につき年間で10回前後はこうした場を設定していただいていると思います。