家族構成や生き方が多種多様に。
「みんなと同じ」では失敗する!
竹川 さらに最近はライフスタイルが非常に多様化してきています。シングルの方が増える一方で、結婚や出産といったライフイベントが後ろにずれる傾向にあります。その結果、以前のように教育費負担が終わった後に、短期間で、まとまった金額を貯めるというのはなかなか難しくなっています。ですから、早めに対策を立てる必要がありますね。
その場合、世間でいわれる数値を鵜呑みにするのではなく、「自分の場合はどうなんだろう」と考えてみることがとても大事です。
田島 対策をたてておかないと、さっきの話のように、定年退職時に住宅ローンが残っている人は、退職金がそのまま住宅ローンに消えてしまい「これから先はどうしよう」と困ることになるわけですね。因みにこのケースの場合、どうすればいいんでしょうか?
竹川 定年間近な方は、長く働くというのが現実的な解決策ですね。
若い方であれば、これからは教育費や住宅資金と並行して「早い時期から」「少額でも」「長い時間をかけて」リタイア後に向けた準備を行いましょう。ただ、自分で意識してそれを実行するのは難しい…。ですから、ある程度、強制的に貯めていける仕組みをつくることも必要です。具体的には、積立貯蓄に加えて、早い時期から積み立て投資にもトライしてみるとよいのではないでしょうか。
また、実は一番マズいのはそこそこ余裕があるご家庭だったりします。住宅や車もそこそこいいものを買って、教育費などの支出も多い。そのため、リタイア近くになって「お金が残らない」という方も…。大企業で働いていて生活にゆとりのある層こそ、お金の使い方を意識してみることが必要かもしれません。
田島 そこそこ余裕のある人の方が金銭感覚が鈍ってしまうんですね、怖いですね。
国や会社の制度を確認するだけで
大幅な節約になる!
竹川 年金不安もあり、お金に対して不安を感じている人はとても多いのですが、それに対しての行動は両極端だと感じています。不安に感じているのにそのまま何もしない方。逆に過度に不安になりすぎて、あわてて金融機関に駆け込み、言われるままに商品を買って失敗する方もいます。
でも、不安に感じるならまず、自分が受けることができる公的な保障をしっかりと確認することです。それに加えて、自分の会社の制度(企業内保障)をしっかり調べてみて、足りない分を自分で準備する。それだけで大幅な節約になります。
田島 企業年金制度、健康保険制度…、確かに今自分が利用しているものを見直すのは大事ですね。
竹川 中には保障が充実している会社もあります。会社の退職給付制度を理解したり、健康保険組合のパンフレットなどをしっかり読んだり…、できることはたくさんあります。
例えば、勤務先の医療保障や所得保障の有無、保障がある場合にはどの程度の期間、金額を受け取れるのかを調べていただきたいですね。思ったよりも手厚い保障が受けられるかもしれません。健康保険組合や共済会のウエブサイト、窓口などで確認できるはずです。それによってはかなりの金額が節約できる可能性もあります。単純に考えて、一家族で月3万円の保険料を20年払うだけで720万円ですからね。半額にできれば360万円が節約できます。
田島 それは大きい。絶対に見直した方がいいですね。
竹川 健康保険組合からのお知らせや、ねんきん定期便を読んだことがないという方もいますが(笑)、それはもったいないです。まずは「公的保障」、そして、「企業内の保障」、それで足りない分を自分で準備する。この3段構えでいきましょう。
会社と同じように決算を出すだけで
ほとんどの家計は改善する!
竹川 会社の仕事であれば、中長期の計画を立てて、予算を決めて、その中で実行しますよね。そして1年間の決算を出す。
田島 マネジメントやファイナンスに携わっている人のみならず、予算管理を業務でやっている人もいますしね。
竹川 個人でも、それと同じようにやっていけばいいと思うのです。手取りの収入や支出がどれくらいで、1年間でどのくらいの金額を貯められているか。資産や負債はどうなっているのか。家計でも、年に1度、決めた時期に決算を出す。そして定点観測をしていく。そうすることで、「ここ数年、金融資産が増えていないからまずいな」といった問題提起も出てくるわけです。
田島 確かに。仕事でやれているんだから、それを自分のためにもやればいいじゃないかってことですね。
竹川 レコーディングダイエットなどもそうですが、まずは状況を把握することが大事。とくに継続的に「記録する」ことは重要ですね。記録された数字を見て「どうしてお金が貯まっていないんだろう?」と疑問に思うことからすべてが始まります。これを行うだけでも、家計は改善すると思いますよ。
それに、お金を増やすことは単にお金を貯めることではありません。未来の自分をイメージして将来の選択肢を増やすことだったり、人生を豊かにするための可能性を膨らませたりすること。そう思ってほしいですね。