この1月に『はじめての「投資信託」入門』を上梓したファイナンシャル・ジャーナリストの竹川美奈子さんと、『プレイングマネージャーの教科書』の著者で、人材マネジメント、キャリアアドバイスなどで有名な田島弓子さん特別対談が実現。4月は「仕事」や「将来」、を考える絶好の機会。それぞれの専門家であるおふたりに、「キャリア」と「お金」について語ってもらった。

お金を増やすには「支出を減らす」
「収入を増やす」「運用する」この3つの方法のみ

竹川 4月ということもあって、新しい環境に変わった皆さんも多いかもしれません。こんな時期にこそ「お金」について、改めて考えてほしいと思います。

田島 就職してお給料がもらえたり、転職や昇進などでお給料の額も変わったりしますもんね。

竹川美奈子(たけかわ・みなこ) LIFE MAP,LLC代表/ファイナンシャル・ジャーナリスト。明治大学卒業後、出版社や新聞社勤務などを経て独立。2000年フィナンシャル・プランナー資格を取得。新聞や雑誌などを中心に執筆活動を行なう一方、投資信託やETF(上場投信)、マネープランなどの講師も務める。著書に『投資信託にだまされるな!2010年最新投信対応版』、『あなたのお金を「見える化」しなさい!』(ともにダイヤモンド社)『金融機関がぜったい教えたくない 年利15%でふやす資産運用術』(かんき出版)他多数。
著者ウェブ http://www.m-takekawa.jp/ https://www.facebook.com/lifemapllc

竹川 そうですね。セミナーなどでは「将来が不安」という声を耳にします。けれど、長期的にお金を増やしていくには3つしか方法はありません。「支出を減らす」「収入を増やす」「運用する」です。

 一番最初に実行できるのは「支出を減らす」こと、つまり無駄なものを減らすという節約ですね。「収入を増やす」に関しては、会社員の場合、お給料がいきなり2倍、3倍にはなりませんから、「働く期間を長くする」か、世帯で考えて「稼ぎ手を増やす」というのが現実的です。結婚したらできるだけ共働きをするというのも有効な手段です。そして、お給料の一部を「運用する」。

田島 この3つがそろったら最強ですね。

竹川 そうですね。例えば、ムダな支出をそぎ落とすことができれば、その分浮いたお金を貯蓄や投資に充てることができるので、資産形成する上ではプラスですし、自分への投資、例えば、専門知識や語学の勉強などにお金を振り向けることで収入アップにつながるかもしれません。この3つは実は密接につながっているのです。

田島 なるほど。3つの要素はつながっているわけですね。

竹川 お金に関して無頓着のままだと、リタイア間近になって危機的な状況に気づく場合もあります。例えば、今の50代は20~30代に比べて比較的余裕があると言われていますが、結構個人差があります。企業のマネープランセミナーでは個人版の簡易なバランスシートや損益計算書をつくってもらいます。

 50代の方にバランスシートを作成してもらうと、同じ年齢で、同じ会社に入社して、お給料があまり変わらない場合でも、金融資産や負債などは全く違うということもよくあります。

田島 そんなに違うんですか?

竹川 例えば、お金に関して計画的に考えている方だと50代の半ばには住宅ローンを完済していたりします。その上で退職時には1000万円や2000万円といった退職一時金が受け取れます。そういった方は無理にハイリスクな運用をしなくても、大失敗をしなければ生活していけるので心配はないのですが…。

 逆にお金に関してあまり計画性もなく来てしまって、同じ50代後半で、まだ1000万円以上の住宅ローンが残っていて、さらに金融資産が少ししかない、というケースもあります。つまり退職金で住宅ローンを全額返済したらもういくらも残らないのに、貯金がほとんどないんです。それで定年直前になって困っている、というような…。

 こうした差は半年や1年でできるわけではなく、5年10年、20年の積み重ねの結果、それだけ差が開いていくということです。

田島 30年後のその差を新入社員の時に見せてあげたかったですね。

竹川 本当に!早く気づけば、それだけ軌道修正もききますからね。